【アメリカ記者の眼】ユーモアを持って役割を受け入れた上原浩治。賢者の存在にレッドソックスは感謝すべき
今季、クローザーから競ったセットアッパーへ配置転換が予定されている上原。本人はチームのために前向きな姿勢を示した。
2016/03/19
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「特別気にする出来事ではない」
そんな選手の心の内はさておき、スポーツライターとしては、このような批判や論争を取材するのは、正直悪い話ではない。日々の単調な仕事に変化が出るからだ。
だが、上原は我々の予想を裏切り、非常に機嫌良くキャンプインした。今シーズンからの自分の役割を、謙遜と品格、そしてユーモアを持って受け入れていた。
「スターター!」と上原は英語で答えた。記者団から、クローザーと中継ぎのどちらが良いかと聞かれた時だ。最初の紅白戦を終えると、上原は笑顔でこう答え、そして軽く走り去った。この一言で、その後続くはずだった、今回のコンバートに関する心境、悔しくなかったのか、そして中継ぎという“降格”を受け入れられるのか、といった記者からの質問を上手に交わしたのだ。
その後、彼は「特別気にする出来事ではない」と語っている。だから、この状況でも笑顔でいられると。さらに上原は次のように続けた。
「僕が何かを言っても仕方がないと思う。クローザーをする前はセットアッパーだった訳だし、特別気持ちを整理する必要もない」
上原は、すべてはチームとチームの勝利のためだと続ける。全く模範的な回答だ。
もしかしたら、メディアの前では強気を崩さず、笑って建前を語っているだけではとの声もある。そして、取材ができない場所では違う顔をみせるのではないか、と。
私はそうは思わない。
レッドソックスという球団は公の場で何かを発表する際、特に今回のような配置転換などに関して球団としての見解を述べる時、その行間を読むのは割と簡単だ。
嘘が下手な球団なのだ。
今回の球団会見のコメントは、私が個人的に取材したものと全く同じだった。