セ最多4人。選手育成成功のカギ握る、ベイスターズ“元スカウト”コーチ
横浜DeNAベイスターズは、現在4人のスカウト経験のあるコーチが選手指導に当たる。
2016/03/03
コーチがやるべきこと
本来であれば、スカウトを経験しなくとも選手の長所はチーム内で共有されるべきなのだが、それが現状なのだ。だからこそ、進藤のような経験を持つ人物は貴重ではないか。
進藤は続ける。
「例えば、今年だと創価大のピッチャー(田中正義)に注目が集まっていますよね。仮にウチが今年のドラフトで彼の競合を避けて違う選手の一本釣りに走るとすると『何やってんだよ。思い切って指名すりゃいいのに』とか『1位といってもウチの選手は競合しなかった程度でしょ』と思ってしまうものですよね。でも、スカウトとしてドラフトを経験すると、なぜ、チームが競合を避けたのかの理由がどこかにあるというのがわかる。そのうえで選手を迎えることができる」
今季入団の選手ではドラフト6位指名の青柳昴樹の例が興味深い。青柳は高校2年夏、大阪桐蔭でクリーンアップを務めて全国制覇に貢献している。ところが3年時になってから打撃の調子を落とすと、各球団のスカウトは軒並み青柳の評価を落とした。
だから、世間からすると青柳は「ドラフト6位選手」なのだが、進藤の中にはそんな考えはない。
「ファームの練習をキャンプ中に見に行ったんですけど、バッティング練習をしているときの青柳の打球音が高卒1年目の選手とは思えない音を響かしているんですよね。これはものが違うと。でも、6位なんです。そこで吉田孝司スカウト部長と話しました。すると、青柳は3年時に調子を落としていたのだと聞いた。そしたら、僕らがすることというのはその調子を落とす原因となった要素を取り払っていくということになるんです」
進藤は自身の口からは「スカウトの経験が生きた」とまでは断言しないが、スカウトを経験した人間に自然と身についている思考なのかもしれない。青柳はキャンプ中の紅白戦で1軍帯同を経験するなど、首脳陣の評価は上々だ。