今年のDeNAは違う? コーチの献身と選手たちの気概が生み出す、強力な“ブルペンワーク”
よもやの大失速をした2015年のDeNA。その要因の一つに上がったのはブルペン陣、特にクローザー山﨑康晃の登板過多だった。チームにとってクローザーのパフォーマンス低下はチームの勢いに影を落とした。一方今季は「11」あった借金を5月に完済。6月に入っても、その勢いはとどまるところを知らない。果たして今季は、どう乗り切ることができるか。
2016/06/05
クローザー山﨑が信頼する男
2年目のジンクス――この迷信めいた通説に対し、横浜DeNAベイスターズの守護神である山﨑康晃は思案を巡らせ語る。
「昨年に比べれば研究もされているし、僕自身、怖さを覚えてしまった部分もあります。そこで重要だと気づいたのは、ブルペンの木塚(敦志)コーチをはじめ、ピッチングコーチの方々との関係ですね。今は『うしろはオマエしかない。オマエが自信を失ったときは俺たちが判断するから』と言われ、割り切って投げることができています。昨年までは一生懸命やる中、ガムシャラになってやっていたんですけど、今年はコーチに自分が気づかないところも気づいていただきアドバイスをもらっています。本当に感謝ですね。よく2年目のジンクスなんていうけど、そういう部分が関係してくると思うんですよね」
今シーズン、ルーキーの今永昇太やブレイクした2年目の石田健大ら先発投手の話題が多いDeNAではあるが、後ろに控えるリリーフ陣もいい働きをしており、借金返済に至った5月攻勢の一翼を担った。
クローザーの山﨑をはじめ、三上朋也、須田幸太、田中健二朗らが盤石の仕事をこなし、チームの勝利はもちろん防御率向上に多大な貢献をしている。
須田や田中らリリーフ陣に好調の理由を尋ねてみると、キーマンとしてあるコーチの名前が挙がった。それは今シーズンからブルペンを任されている木塚コーチの存在である。
ほとんどの勝ち試合で最後にブルペンを出ていく山﨑は、次のように語る。
「木塚コーチは、現役時代に長く(リリーフで)投げていた方ですし、僕らの内情をよく分かってくださっている。だから一生懸命一人ひとりをケアしてくれるんです。試合に入りやすい状況を作ってくれるのはもちろん、試合に入ってからも展開によっては『あるぞ、あるぞ』と先読みをして、前の前の段階、いやその前の段階ぐらいからシチュエーションを予測し、指示をくれるのでいい準備をさせてもらっています。僕には“気遣い上手”のように感じています。投手として、そして一人の人間として思います」
木塚コーチに円滑なブルペンワークの妙を尋ねると「いや、後ろの2枚(山﨑、三上)がしっかりしているからですよ」と、まず選手を讃えた。そしてブルペン陣ひとり一人に対する細かいケアについて訊いてみると、チーム状況を鑑みて必要性があるからだという。
「言われている選手は『細かいな』と思うかもしれないけど、うちのチームは若いピッチャーが多く経験が足りません。だからそこは本人たちが分かっていても、しつこく伝えていかなくてはと思っているんです。これは春のキャンプからやってきたことなので、今後も続けていきたいですね」
徹底した意識付けと、一人ひとりに合った周到な準備。
デリケートな性格の選手が多いと言われる投手をいかにケアし、その気にさせ万全な状態でマウンドに送り込めるかは、ブルペンコーチの腕の見せどころである。
「昨年までブルペンにいた篠原(貴行)コーチがベンチにいるというのも大きいと思います。あとは先発が頑張っているからその背中を見て『よし、俺も』って意気に感じているんじゃないですかね。絶対にこの試合、落とさないぞって」
コーチの献身と選手たちの気概。
そこに今シーズンのDeNAブルペン陣の強さがある。