DeNA倉本、打撃開眼に隠された一大決心――己のこだわりを捨ててプロで生き残る
DeNAの6番を打つ倉本寿彦が好調をキープしている。昨年、大型新人として期待されながらも、不本意な成績に終わった倉本がいかにして打撃開眼を果たしたのか。
2016/06/01
昨季は大型新人として期待を受けた
己のこだわりを封印し、自らを生かす――。
「チームプレーなので僕としては何とかヒットを打ち、出塁をし、得点につながる働きをしたいと思っているんです」
横浜DeNAベイスターズの倉本寿彦は、自分に言い聞かせるように、そう語った。
5月攻勢で巻き返しに成功したDeNAにとって倉本は、今やチームになくてはならない存在だ。チームが打撃不調で苦しんだ3~4月に倉本は、我が道を行くかのごとく徐々に調子を上げ3割をキープ。
さらに5月に入るとヒットを量産し一時は.350の高アベレージをマークした。守備でもチームに貢献し、昨年よりも安定した正確なスローイングもあり交流戦前まで失策は0。ラミレス監督から絶大な信頼を得ている。
一体、倉本に何が起こったのか?
昨年と今年のバッティングを照らし合わせると、倉本いわく「真逆ですね」というほど変化している。
昨年のルーキーイヤー、倉本は社会人屈指の内野手として大きな期待を受けていたが、102試合に出場し打率.208と低迷。望まれた結果を出すことはできなかった。
特徴的な右足を大きく引き上げた一本足打法。社会人時代、臨時コーチとして知り合った稀代のホームランバッター門田博光のバッティング理論に倉本は心酔し「自分に合うはずだ」と確信した。
門田の理論は端的に言えば『足を上げて、体をひねって、反動で打つ』というものだ。体を柔らかく使い、ボールをしっかりと呼びこんで、インサイドを強く振り抜く――つまり長打を意識した打法で、倉本自身、門田理論を用いることで社会人時代に功を奏したこともあり、長打力は自分の持ち味だと自信を持っていた。
しかしプロでの実戦が始まると、すぐに壁にぶつかった。インコースのボールには対応できるものの、アウトコースに逃げていくボールに苦戦した。
倉本は、球界最重量の940グラムのバットを体の反動を使って振りプロのボールに適応するのは難しいと痛感した。自信はもろくも瓦解する。
今の自分には何が必要なのか?
打撃論に頑な面のあった倉本だったが一大決心をし、プロで生き残るためプライドを捨てる。つまり“強く振る”“大きいのを打つ”という自分の理想に見切りをつけたのだ。