ラミレス監督と山口俊、現役時代の約束を今――リーグ3完封、指揮官の信頼にこたえる『捨て身の覚悟』
横浜DeNAベイスターズのアレックス・ラミレス監督が信頼を寄せている山口俊。ラミレス監督がまだ現役として活躍していた2013年当時、横須賀で山口に「もしオレが監督になったら先発投手にする」と約束していた。
2016/07/06
2013年に交わした約束
今シーズンはここまで6勝4敗、防御率3.02とまずまずの数字を残しているが、昨年との大きな違いは何だろうか。キャッチャーの髙城俊人は次のように分析している。
「チームオーダーの内角攻めも大きいんですけど、今シーズンは巧く変化球を使えていることですね。フォーク、スライダーに加え、昨年までほとんど使っていなかったカーブが効果的に使えている。打たれる試合はあるんですが、その場合はフォークを見切られたときだけで、他のボールは問題ないんです」
ストレートと変化球のコンビネーションの妙が、今シーズンの山口の投球内容の良さに繋がっている。ちなみにシーズン前に話題になったワンシームに関しては髙城いわく「ほとんど使っていない」ということだ。
山口としてもラミレス監督の期待に応えたい気持ちは人一倍強い。昨シーズン、3勝6敗、防御率4.49という成績だった山口を、ラミレス監督はエースに指名したのだ。
「普通だったらそんなことあり得ないですよね」と、山口は自ら置かれている状況を思い、シーズン前にそう語っている。
だが、そこには二人にしか知りえない未来を予見する信頼感にあふれたストーリーがあった。
さかのぼること2013年のシーズン、まだ現役選手としてDeNAに所属していたラミレス監督と、当時クローザーだった山口は、ファーム施設のある横須賀で以下のような会話を交わしたという。
ラミレス「オマエは先発とクローザー、本当はどっちをやりたいんだ?」
山口「じつは先発をやりたいんですよ」
ラミレス「よし、オレがいつか監督になれる日が来たらオマエを先発にするから、それまで頑張ってくれよ」
ラミレス監督が数年後DeNAの指揮官になることなどまったく予想がつかなかったころの話である。二人にとっては他愛のない会話であり、見果てぬ夢だったものが、図らずも現実となった。現在、ラミレス監督はベンチに立ち指揮を執り、山口は先発として誰にも汚されていないマウンドに立っている。
当時からラミレス監督は山口のポテンシャルを見抜いていたのだろう。もちろん山口はその期待に応えるため、今シーズンは「捨て身の自分になる」と誓っている。
勝負となる後半戦――山口のタフネスさはDeNAの躍進にとって必要不可欠なものであることは間違いない。