野球界にも影響。日本特有のスポーツモデルを転換させたJリーグの「地域密着」という発想
サッカーのみならず野球も、現在はチーム名に地域名が入るのが当たり前になった。地域に対する意識が高まった背景には、何よりも日本のスポーツモデルが大きな転換期を迎えたからである。REGISTA有限責任事業組合代表で『地域スポーツクラブのマネジメント』(カンゼン)の著者である谷塚哲氏は、今後、日本のスポーツモデルにおいて、ますます地域密着が重要になると指摘する。
2014/12/09
プロ野球とJリーグのチーム名に注目
1993年にJリーグがスタートした際に、大きな話題となったのがクラブ名に企業名を入れるかどうかである。
プロスポーツを企業の広告宣伝ととらえていたプロ野球側は、企業名を入れることが当たり前と主張し、一方、地域密着を掲げるJリーグ側からすれば企業名を外し、その代わり必ず地域名を入れることを主張した。
そのどちらが正しいかはいまだに答えは出ていないが、少なくとも現在のプロ野球12球団においても積極的に地域名を打ち出しプロモーションをかけているチームが増えていること、さらにはフランチャイズを地方に移し成功をあげるチームが増えている現状を考えれば、プロ野球界においても「地域密着」という言葉の重要性が増していると言えよう。
【プロ野球12球団のチーム名】太字が地域名
読売ジャイアンツ
阪神タイガース
広島東洋カープ
中日ドラゴンズ
横浜DeNAベイスターズ
東京ヤクルトスワローズ
福岡ソフトバンクホークス
オリックス・バファローズ
北海道日本ハムファイターズ
千葉ロッテマリーンズ
埼玉西武ライオンズ
東北楽天ゴールデンイーグルス
【2014年 J1リーグのチーム名】太字が地域名
ガンバ大阪
浦和レッズ
鹿島アントラーズ
柏レイソル
サガン鳥栖
川崎フロンターレ
横浜F・マリノス
サンフレッチェ広島
FC東京
名古屋グランパス
ヴィッセル神戸
アルビレックス新潟
ヴァンフォーレ甲府
ベガルタ仙台
清水エスパルス
大宮アルディージャ
セレッソ大阪
徳島ヴォルティス
これはスポーツの世界だけではなく、一般のビジネスにおいても、近年、地域密着を優先する戦略がとられることが多い。そういった意味でもJリーグが掲げた「地域密着」という概念は、日本のスポーツ界に根をはり、着実に広がっているのである。
実際におらが街にJクラブをつくろうとしている地域は現在100地域を超えていると言われており、その多くは地方自治体や商工会議所などと連携をし、スポーツのみならず、スポーツを通じて街の活性化を目指している。
ドイツと比べればまだまだ成功事例といえるほどの変化があるわけではないが、少なくともJリーグの誕生はスポーツを通じた地域社会の活性化に期待を持つ機運を日本社会の中に植え付けたことに関して、大変大きな功績と言えるだろう。
現在、Jリーグが誕生して約20年。Jリーグが掲げた百年構想の実現にようやく動きはじめたと言っていい。そして野球やバスケットボールさらには他競技においても、地域密着の重要性が理解されはじめてきている。