CS争いの舵取り役・DeNA戸柱は隠れた新人王候補。数字以上に優れた特異な“捕手力”
セリーグはクライマックスシリーズ3位争いが佳境を迎える。CS制度がスタートしてから初めての進出を狙う横浜DeNAベイスターズ。その中心に社会人から入団した、ルーキー捕手がいる。
2016/09/17
激減したDeNAの暴投の数
「堅実ですね。スーパープレーはないけど安定した良い状態でやってくれている。なかなかルーキーでは、ああはいきませんよ」
シーズン開幕前にこう語っていたのは、横浜DeNAベイスターズの光山英和バッテリーコーチである。
新人キャッチャーながら開幕スタメンを手中に収めた戸柱恭孝について質問が及んだときのことだ。
「インコースに対しても使い方がいい。ベンチからサインを出さなくてもリードができている。テンポが速い久保(康友)にも問題なくついていけている」
シーズン前、戸柱が開幕スタメンを勝ち取ったとき、ファンは淡い期待を寄せていたが、過度な成果は求めていなかったはずだ。
キャッチャーという特殊なポジションは、人材が育ちづらい。ゆえに数年来、DeNAのキャッチャー陣はチームのアキレス腱と言われつづけてきた。
昨年は黒羽根利規、嶺井博希、髙城俊人らが三つ巴で正捕手争いをしており、今シーズンはここに戸柱が加わると見られたが、蓋を開ければルーキーの一人勝ち。正捕手のノルマと言われるシーズン100試合以上(117試合・以下データは9月15日現在)でマスクをかぶっている。
近年、100試合以上マスクをかぶったルーキーは元ヤクルトの古田敦也氏(1990年106試合)と巨人の阿部慎之助(2001年127試合)ぐらいなものだろう。
いわば戸柱はプロ野球界全体をみても稀有な存在であり、大学・社会人を経た26歳のルーキーとはいえ100試合以上マスクをかぶりつづけた苦労とタフさを考えると、非常に高い能力を持ち合わせていることが分かる。
もちろんチームに絶対的捕手がいなかったというラッキーな面もあったことは否定できないが、戸柱を大抜擢したラミレス監督の慧眼も忘れてはならない。DeNAがシーズン終盤にあってクライマックスシリーズ争いができている要因はいくつかあるが、戸柱の起用は大事なファクターのひとつだと言ってもいい。
例えば、昨シーズン記録したプロ野球ワーストタイとなる68暴投は、現地点で38と激減しており、戸柱のチームに対する貢献度の高さが窺える。打率は.233で出塁率は.272とキャッチャーとしてはまずまずの数字を残しており、時に意外性のあるバッティングで幾度となくチームを波に乗せている。
惜しむらくは盗塁阻止率が.196とリーグの主だったキャッチャーの中で最下位ということだ。ここは改善の余地があるものの、とはいえ今シーズン、相手チームに足で翻弄されているといった印象はあまりない。