DeNA・山﨑&須田、想いを込めた最終マウンド――CS進出の立役者2人が見据える、来季への希望
CSに初めて進出したDeNAの戦いはファイナルに進んだものの、日本シリーズをかけたステージでは、1勝3敗と完敗した。その最終戦、敗色濃厚ながら、最後の輝きを解き放ったのがブルペンを担う山﨑康晃と須田幸太だった。ともに、レギュラーシーズンをいい形で締めくくることができなかった彼らが見せた未来への希望とは。
2016/11/16
選手生命を掛けた“超便利屋”須田の復帰
DeNAの選手たちにとって今年のCS進出は経験値として大きな財産になったわけだが、中継ぎの要でありチーム最多の62試合に登板した須田幸太にとっても、並々ならぬ想いを胸に抱いての意義深いCS出場となった。
Aクラス入りの立役者である須田だが、シーズン終盤の9月24日の読売ジャイアンツ戦で、左腿裏に肉離れを起こし、戦列を離脱した。かねてから熱望していたCSでの登板は厳しいとの見方もあったが、急ピッチで治療とリハビリ、調整を行い、驚くことに10月14日に行われた広島との第3戦で中継ぎとして登板した。3点リードの8回の裏、須田は2死満塁の場面で新井貴浩と対戦し、真骨頂の強気のオールストレートでピンチを脱すると、チームのファイナルステージ初勝利に貢献した。
須田は今回のCS出場について次のように振り返る。
「今回はずっと緊張していましたね。チームから声がかかって、新幹線に乗って移動しているときもホテルに着いてからも普段と違う。今までそんな緊張することはなかったんですけどね」
噛みしめながら語る須田。やはり選手として特別な舞台だったということなのだろう。
「とはいえマウンドに立てば普段と変わらない。自分の仕事をするだけですよ」
ケガから急ピッチの仕上げではあったが、須田自身「100%の状態。万全でマウンドに上がった」と語っていた。もちろん起用する首脳陣も、選手管理の観点から万全でなければ起用することはできない。
だが悲願のCSに対し、須田の本音は必ずしも綺麗事ばかりではなかった。
「うーん、実はどうなるかわからず、ギャンブルみたいなところもあったんですよ。もしかしたらまた同じところをケガしていたかもしれない。今回投げることによって、来年への調整が遅れる可能性もある。けど、そういったことを抜きにしても、投げたかった……。チームの力になりたかったし、僕自身のためにも……」
そして、核心的なことを口にする。
「正直、ここで選手生命が断たれても構わない、という気持ちもあったんです。だから急ピッチで仕上げたんですよ」
覚悟の日々――2010年のドラフト会議で1位指名され期待された存在だったが、一昨年ぐらいまでは望まれる結果を残せずにいた。しかし今年はシーズン前『超便利屋宣言』をして、ついにチームになくてはならない存在になった。その裏側は、背水の陣のごとき危機感が須田を支配していた。
「もう30歳ですし、ここから1年1年、ダメになったらクビを切られてしまう立場。だから実際、来年のことなんて考えられませんでしたよね」
明日はないかもしれない――だからこそ須田はCSへの出場を渇望したというわけだ。あらためて須田は、今シーズンを振り返る。
「よくやったと言われるシーズンでしたが、究極をいうなら3敗してしまったので、それがなかったら百点満点ですね。まあ本格的にリリーフを始めて1年目にしては、自分でも上出来なのかなって。ただ、最後ケガをしてしまったり、途中で登録を外れたこともあり、キヅさん(木塚敦志コーチ)からは『オマエはまだ本当の意味で1年やっていない』と言われました。だから来年は本当の意味で1年間フルでやることが目標になりました」
須田はそう言うと、自信に満ちた笑顔を見せてくれた。ここに来て、ようやくイメージすることができた来シーズン――若い選手たちを牽引するブルペンリーダーであり、“超便利屋”の須田の活躍がなければ、チームが目指す頂へは、登り詰めることはできないだろう。