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ぼくらは日本の選手会という組織について余りに知らなすぎる――【日本プロ野球選手会事務局長 松原徹回顧録1】

2004年の球界再編問題の時に、日本のプロ野球選手会の存在を知った野球ファンの方は多くいるのではないだろうか。しかし残念ながら、実際に選手会はどういう経緯で立ち上がり、どんな組織で、何を行っているのか、ほとんどの野球ファンがしっかりと答えられないのではないだろうか。今回、ノンフィクションライターの田崎健太氏がプロ野球選手会事務局長の松原徹氏へ選手会、そして野球界の抱える様々な問題について取材を行った。ベースボールチャンネル特別連載にてお届けする。まずは選手会の中身の前に、事務局長の松原氏がどうしてこの組織に携わるようになったのか、背景をお伝えしたい。

2015/03/08

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球界再編問題で、日本のプロ野球選手会が表舞台へ

 日本にもプロ野球選手会という組織がある。この選手会が表舞台に出て来たのは、2004年の近鉄バファローズ消滅から始まった球界再編だった。
 
 当時の古田敦也会長をはじめとした選手会が動かなければ、球団数は減り、東北楽天ゴールデンイーグルスという球団は誕生しなかった。
 奇しくも、メジャーリーグの〝94年〟の10年後に日本のプロ野球にも一つの転機が訪れた形となる。

 ただ、ぼくらはこの日本の選手会という組織について余りに知らなすぎる――。
 それには理由もある。
 
「昔は選手会のことを新聞記者が記事にしただけでも、球団から出入り禁止を食らったんですよ」
 と事務局長を務める松原徹は回顧する。88年から事務局に籍を置く松原は、選手会の変化をつぶさに見てきた――。
 
 まずは松原の人生を辿ってみる。
 
 松原は1957年5月に川崎市で生まれた。実家の近くにある小学校のグラウンドで野球をやっていたことから、小学1年生から野球を始めた。中学校には野球部がなかったため、バレーボール部に入ったが、川崎高校で再び野球に没頭することになった。
 
 高校時代で一番の思い出は2年生春の神奈川県大会である。
 
 川崎高校は3回戦で横浜高校と対戦した。横浜高校は前年、73年春の選抜甲子園で2年生エースの永川英植を擁し、初出場初優勝という快挙を成し遂げていた。秋季大会でも神奈川県大会優勝。その横浜高校を相手に、川崎高校は1対0と勝利したのだ。
 
 この試合で松原は捕手としてマスクを被っている。ちなみに横浜高校の永川は74年のドラフトでヤクルトスワローズから1位指名を受けてプロ入りした。
 
 松原は立教大学への進学を希望したが不合格となり、1年浪人した後、神奈川大学へ進学した。
 神奈川大学は神奈川大学野球連盟に所属する強豪校である。入学後、松原は遊撃手に転向させられ、試合出場機会を掴んだ。
 
 しかし――。
 1年生の夏、右足を負傷し手術、その後も腰を故障し、選手を諦めることになった。
 
 監督はそんな松原にマネージャーにならないかと声を掛けた。それまでマネージャーを置いていなかった神奈川大学野球部で、松原は初の専任マネージャーとなる。リーグの運営などに携わるうちに、裏方の仕事の面白さに目覚めた。そして、朧気に将来はプロ野球球団のマネージャーになれればいいなと思うようになった。ただ、どのようにすればプロ野球球団で働くことが出来るのかなど、全く想像もつかなかった。
 
 78年、横浜市中区に横浜スタジアムが新設された。大洋ホエールズが「横浜大洋ホエールズ」と改称、本拠地をそれまでの川崎球場から横浜スタジアムへと移した。横浜スタジアムは神奈川大学の野球部の寮と目と鼻の先だった。
 
 この移転が松原の人生を変えた――。
 
86年オフ、ある男からの呼び出しが、松原氏の運命を変えた【日本プロ野球選手会事務局長 松原徹回顧録2】

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日本プロ野球選手会事務局長
松原徹(まつばら・とおる)
1957年5月、川崎市生まれ。1981年に神奈川大からロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテ・マリーンズ)に球団職員として入団。一軍マネージャーなどを務めた後、1988年12月に選手会事務局へ。2000年4月から事務局長。2004年のプロ野球再編問題では、当時のプロ野球選手会の会長であった古田敦也らとともに日本野球機構側と交渉を行った。

第2回目は、3月22日更新予定です。

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