タイブレーク導入推進は正しいのか? 大会日程延長と肩ひじ検診の厳格化の検討を
日本高校野球連盟は10月20日にタイブレーク導入を決定した。選手の体調管理が目的の一つだが、タイブレーク導入によって解決するのだろうか。先日、MLBと米国野球連盟はGM会議で、18歳以下のアマチュア投手を対象にしたケガ防止のためのガイドラインを発表した。今後、日本の野球界でもこういった視点で議論が活性化されることを望みたい。
2014/11/15
タイブレーク方式の導入決定は早すぎないか?
驚くほどのスピードだった。
10月20日に行われた日本高校野球連盟の技術・振興委員会でタイブレーク方式を導入することが決定された。
竹中事務局長は「導入は決定」とまで言った。
今後は来春から甲子園に直結しない都道府県大会や地区大会を選定した上で実施(10回は1死満塁から行う)されるが、将来的には、夏秋の都道府県大会で実施されるのも時間の問題だといえよう。
筆者としては、事態は現場の望まない方向に確実に動いているように思えてならない。
高野連は今年7月10日付で全加盟校にタイブレーク方式についてのアンケートを送付し、先日、結果を公表した。
多くのメディアも報道したが、高野連の発表では「回答率98%で49.7%が支持、半数は反対」とのことだった。
タイブレークに関しては何回から始めるのが適当かなど、質問が初めから〝タイブレークありき〟になっている。
また、アンケートには「タイブレーク方式導入に反対」という項目がなく、反対するにはわざわざ「反対」の文字を書き込まなければならなかった。
プロ野球のファン投票でもマークシートにノミネートされていない選手に投票は集まらない。わざわざ書くことがどれだけ面倒なことかわかるだろう。この形式で半数が反対ということは、現場がどれだけタイブレークを望んでいないかがわかる。
タイブレークは野球のおもしろさを削ぐ
そもそも、タイブレーク方式自体、野球のおもしろさを半減させる制度だといえる。
野球には〝流れ〟があるからだ。同じ0対0でも走者を出しながらあと一本が出ず、残塁の山を築いた0点もあれば、まったく打てずに手も足も出ない0点もある。0対0だからといって、イーブンではない。
例えば9回裏無死満塁で0点だったとする。〝ピンチの後にチャンスあり〟の格言の通り、10回表は明らかに9回裏の絶体絶命のピンチをしのいだチームに流れがくるはずだ。 それがどちらのチームも1死満塁からのスタートでは、流れも何もあったものではない。チャンスを逃したチームの投手が先頭打者にどんな投球をするのか――。
こういう場面こそ高校生は自身の、チームの精神面が試される。そして、それが高校野球のおもしろさなのだ。
過去の甲子園で語り継がれる試合は、多くが延長戦によるものだ。1979年夏の星稜対箕島の延長18回、98年夏の横浜とPL学園の延長17回、2006年夏の駒大苫小牧対早稲田実の延長15回引き分け……。炎天下の中、何時間も並んで、ときには徹夜をしてまでいい席を確保して、汗をダラダラ流しながら観戦するファンの多くは、延長でしか見られないドラマを期待している部分もある。
緊迫した延長戦は選手にとってマイナスなことばかりではない。その証拠に、98年夏のPL学園のエース・上重聡は試合後にこんな言葉を残している。
「松坂(大輔、現メッツ)との投げ合いが楽しくて。いつまでもこの時間が続けばいいのにと思いながらマウンドに立っていました」