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“田中正義ロス”のスカウト陣が注目、名古屋経済大・眞野聖也と中尾輝。2部リーグの両逸材に共通するプロでの成功法則

12球団がドラフト1位指名するとまで噂された創価大の田中正義が故障した今、ドラフトの注目は地方にまで及んでいる。愛知県2部リーグに所属する名古屋経済大の眞野と中尾だ。昨今、スカウトの中でささやかれるプロでの成功法則と2人には共通点があった。

2016/05/21

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尾関雄一朗



母子家庭育ちという共通点

 この両逸材、2人とも母子家庭で育ったという共通点がある。そして、その母親の存在が、少なからず2人の野球人生を左右した。

 眞野は母親の一言で、大学でも野球を続けようと決意したという。

「商業高校だったので、卒業後は就職しようと思っていました。名古屋経済大から勧誘があったときも、大学で野球を続ける気がなかったので悩みました。でも母が『続けてみたら』と言ってくれたんです」(眞野)。

 中尾は、名古屋市内で飲食店を営む母親の手料理で体を大きくしてきた。

「大皿で作ってくれて、僕も店で食べています。皿半分にごはんが乗っていて、おかずは焼きそばやハンバーグ、つくねなどが多いです」(中尾)。

(中尾)DSC_3673

 高校時代は62キロだった体重が大学で80キロまで増えたのは、平生のトレーニングとこの手料理効果に他ならない。

 実は東海地区のドラフト候補で、母子家庭出身者の“サクセス・ストーリー”は少なくない。関根大気(東邦高~DeNA・2013年ドラフト5位)はドラフト会議前後、「家族を楽にしたい」という旨の抱負を口にして話題になった。野間峻祥(中部学院大~広島・2014年同1位)は大学時代、返済が必要な奨学金を受けながらプレーしていた。高橋朋己(西濃運輸~西武・2012年同4位)は中学時代に父親を亡くしている。東海地区以外でも、たとえば秋山翔吾(西武)や大野雄大(中日)は女手一つで育てられた。

 母子家庭で育った選手に対し、プロ球団スカウトの中には思い入れを抱く人もいる。育った環境ゆえのハングリー精神を見出すというのだ。

 もちろん、それは多少のステレオタイプに影響されていて、「母子家庭」(ひとり親家庭)を一括りにして論じるのは乱暴だ。また、当然ながら母子家庭を理由にドラフト指名されることはないし、プロで活躍できるという因果も成り立たない。
 ただ、私事ながら筆者も母子家庭で育っており、彼ら(彼らの家庭)が他とは異なる“制約”をいくらか受けてきたであろうことは想像できる。そんな個性に期待するのもスカウティングであり、肩入れするのもまた人情だ。

 両投手は大学でぐんと伸びた。眞野は高校2年夏に甲子園で1イニング投げているが、直後の秋にヒジを痛めるなど頓挫があり、今ほど球速は速くなかった。中尾も高校時代は「変化球投手」(本人談)で最速130キロ止まりだった。当時、ここまでの変わり身を誰が予想できただろうか。それこそ、彼らの母親や指導者など、近くで支えてきたごく一部の人間に限られるだろう。

 田舎にある”無名大学”で、のびのびと腕を磨いた左右の両輪が大きな花を咲かせようとしている。名古屋経済大史上初のプロ誕生の可能性、母子家庭…そんなバックグラウンドも手伝い、夢は膨らむばかりである。

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