【MLB】「未知の部分が解明」統計指標の発達とともに変化した、イチローの真の評価
MLBの世界において2000年代から大きく台頭してきたセイバーメトリクス。01年からプレーしているイチローも指標の発達によってこれまでは見えなかった長所、そして欠点を解明されてきた。
2015/09/26
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数値からわかる、イチローの貢献度
打率に比べてより勝利への相関が高いとされる出塁率やOPSを重視する気風が生まれたことで、「四球を選ばず、長打も少ないイチローは、打率のわりにチームへの貢献度がそれほど高くない」という批判も少なからず生まれた。
実際に首位打者に輝いた2001年は打率では両リーグトップタイながら、出塁率は36位、OPSでは57位と大きく順位を落としている。もっとも後年WAR(走攻守全ての要素を含んだ選手評価指標)を代表する総合指標が市民権を得ることで攻撃面ではともかく、試合全体ではイチローがチームに大きく貢献していたことが改めて実証されることとなる。
指標の進化は守備の評価にも大きな変化をもたらした。
守備防御点やUZRの登場によってレーザービームと称されていた肩で03,04年にはそれぞれ+6点ずつを防いだことや、一方で近年肩の強さは平均以下のレベルまで落ちてきていること(通算では-3)、一時期数字を落としたものの守備範囲の広さは再びトップレベルまで持ち直していることなどが判明、以前は印象だけで称賛されていたイチローの守備も具体的な数字を伴って語られるようになっていった。
走塁面ではイチローの走塁能力自体が優れていることに加え、「併殺打を打たないことによる貢献」や「リードの広さ」といった面でもメジャートップの数字を記録しており、普通に試合を見ているだけでは気づきにくいイチローの隠れた特徴も明らかになっている。
もし打率が絶対的な意味を持っていた数十年前のMLBでイチローがプレーしていたら、細かい数字を根拠とした批判を受けず今よりもさらに高い評価を受けていたかもしれない。
しかし野球に関するあらゆる数字が発達した現代だからこそ、ファンはそのプレーの素晴らしさをより正確に知ることができるのではないだろうか。
出典:The Need for Lead: What Statcast Teaches Us About Baserunning … and Ichiro by Ben Lindbergh in GRANTLAND on Sep.22 2015