【MLB】ヤンキース、田中「一発病」からの脱却。豪快さ潜めるも、身につけた『試合を支配する力』
今季は1勝止まりも、これまでの投球内容は昨年とは違う安定感がある。何よりも注目すべきは被本塁打率の低さだ。
2016/05/09
Getty Images
メジャーに必要な投球スタイル
今季は援護点が低く1勝止まり(0敗)だが、6試合で39回1/3を投げ防御率は2.29。リーグ9位に位置する。防御率3.51だった昨季と比べ、特に光るのが被本塁打率の低さだろう。
昨季の田中は、新人だった14年の15被本塁打から、25被本塁打と激増させた。「一発病」と日米メディアから指摘され、チームが終戦を迎えたアストロズとのワイルドカードゲームでも2発のソロの前に敗戦投手となった。
もっとも被弾していたのが、今季は投げることが少なくなりつつあるフォーシームだった。
今季はここまで被本塁打はわずか2本。昨季30球団中3位のチーム本塁打217本を誇り、本塁打王2度のデービスらを擁する強力オリオールズ打線に対し、連中が得意とする敵地で「あわや」という当たりさえ1本も許さなかった。
田中の1試合9イニング投げきったと換算した場合の被本塁打率を比較すると、14年=0.99本、15年=1.46本、16年=0.46本と激減させている。
8日現在、リーグ2位の防御率1.38を誇るホセ・キンタナ(ホワイトソックス)らわずか3人しかいない。
投手にとっての被本塁打と、打者にとっての三振は意味合いが違う。三振の多い打者は、その一方でフルスイングを身上としたり選球眼に優れ、出塁率やOPSでチームに貢献しているケースがままある。
だが、投手の被本塁打はマイナスでしかない。勝負にいった結果、という言い訳は通用しない。
最大の反省点を解消した上で、102球で8回を投げ抜くという省エネ投球までもたらした。部分損傷を抱える右肘の靱帯のことを考えても、これ以上の変身はない。
かつての荒々しさや豪快さは影を潜めつつあるのかもしれない。ただタフなメジャーで1年間ローテーションを守り、チームを上位に導く「エース」と称される存在になるためには、これほど頼もしい投球スタイルもない。
野球の試合は「投手7割」とも「投手8割」とも言われる。その投手が、試合を支配する術を身につけ始めた。