田中将大が炎上する3つの理由。復活に必要なこととは?【小宮山悟の眼】
ニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手が調子を狂わせている。オープン戦(OP戦)では調子が良かったものの、対タンパベイ・レイズの開幕戦で崩れ、直近2試合では試合の流れを作れずにマウンドを降りている。田中はなぜ、こんなにも不調に陥っているのだろうか。
2017/05/24
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田中の不調の原因は3つ
想定できる理由は2つある。
1つは疲れだ。シーズンが始まって1ヶ月で疲れるのかと思われる人もいるかもしれないが、シーズン中は何度かヤマが来るのだ。その第1回目のヤマとみていい。開幕戦でやられたのは仕方ないとして、そこからコンスタントに中4、5日を守って投げてきた。ちょうど、その疲れが出始めてきたときと判断していい。
このヤマを一度抜けると10試合近くは普通に投げられるように戻る。問題はいかに、この苦しい時期を短くして乗り切っていくか。春先のように、沈むボールをコントロールできるようにしなければいけない。
もちろん、田中本人も分かっているはずだ。疲労回復のために様々なことを試しているはずだ。しかし、それでもなかなか思うようにいかないのが中4、5日で回ってくる辛さなのだ。日本のように中6日もあれば疲れやすいコンディションにならないが、中4、5日で投げないといけないのがアメリカだから、タフさを身につけていくしかない。
ボールが抜ける2つ目の原因はメカニックな要素だ。
すべてのボールというわけではないが、投球動作に入って投げに行く時、首が一塁側の方に傾いて煽って投げるケースが多くなっている。強いボールを投げたいためなのか、少し力んでいるように見える。これが抑えられているときは、そのブレが全くないわけだから、メカニック的な課題はその差だろう。微妙に力んでいるのだ。
田中はメジャーに行ってから、スタイルが変わった。マウンド上で吠えることが少なくなり、スイスイと投げるタイプになった。セカンドにランナーが進んだらトップギアを入れてということが過去にはあったが、そういうこともなくなり、平常心でずっと投げている。それがメジャーに行ってからの田中の良さだったが、最近の不調は、わずかなところで力が入っているように思う。
ピッチャー心理とすれば、1回に先制を許すと、どうしても力んでしまうものだ。この2戦の炎上の共通するところは、2試合とも先頭打者に本塁打を打たれている点だ。いきなりガツンと喰らって、ピッチングが荒れてしまっている。先頭を何とか抑えてリズムを作っていきたい。
クセ、疲労、力み。これら3つの理由が重なり、田中は不調に陥っていると考えられる。
田中が炎上するとニューヨークのメディアなどからは批判の対象とされる。しかし、これは仕方のないことだ。ヤンキースという名門チームの宿命といえるだろう。田舎のチーム――例えばミルウオーキーやカンザスシティなど――とは訳が違う。期待値が高くなった分の批判が多くなってしまうのは避けられない。
年間を通してローテーションに入っていると、今の田中のように調子が悪いときはある。年間の5分の1くらいはそういう試合はあるものだ。30試合を投げるとして5、6回はこういう形で崩れることはある。過度に気にする必要はない。メジャーはそう甘くないということだ。
田中はやられっぱなしで終わるような男ではない。対策をしっかり練って、次はやってくれるはずだ。
小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。