絶好調レッドソックス、先発ローテの穴埋めた希少なナックルボーラー。速球派増加のMLBで価値上昇か
2018/06/13
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MLBアメリカン・リーグ東地区2位のボストン・レッドソックスは、首位のニューヨーク・ヤンキースが極めてハイレベルなトップ争いを演じている。11日(日本時間12日)時点で、レッドソックスの勝率.672は、メジャー全体でヤンキースの勝率.689に次ぐ2位に位置し、高い攻撃力がチームの好調を支えている。
チーム防御率はメジャー全体5位の3.45と、攻撃力に比べ投手力がやや落ちる。6月に入ってから先発投手5番手のドリュー・ポメランツが故障者リスト(DL)入りしたが、その穴を埋めているのが、現在希少種とも言える存在のナックルボーラー、スティーブン・ライトだ。
2016年には13勝を挙げ、オールスターにも選ばれているライトは、2017年に左膝の手術を受け長期離脱、2018年にDV規定違反があったとして開幕から15試合出場停止処分を受けた。現地5月14日にレッドソックスのロースターに復帰すると、5月中はリリーフ投手としての役割を担っていた。6月5日のデトロイト・タイガーズ戦で今シーズン初先発登板し、7回2安打無失点と好投した。続く6月11日のボルティモア・オリオールズ戦でも6回2/3, 4安打無失点。リリーフ登板分も含めて22回2/3連続無失点を続けている。
ライトのナックルボールは平均球速約120キロ。ボールの縫い目がはっきり見えるほどの無回転ボールがホームベース付近で予測不可能な変化を見せる。キャッチャーが捕球することすら困難な様子の動画がMLB公式サイトや球団公式ツイッターなどでもしばしば公開されている。
投球の主体がナックルボールの現役ピッチャーとしては、ライトの他には2012年サイヤング賞投手のR.A.ディッキーがいる。ところが、ディッキーは2017年シーズン後にアトランタ・ブレーブスからフリーエージェントとなって以来、今季はどのチームとも契約していない。現在のところ、ライトをメジャーリーグ唯一のナックルボーラーと呼んでもかまわないだろう。
米国国立医学図書館ウェブサイトに発表された論文によると、メジャーリーグの投手が投げる速球の平均球速は年々上昇傾向にあり、2008年の90.9マイル(約146キロ)であったのが、2017年には93.3マイル(約150キロ)になっている。球速の上昇が、近年メジャー投手の肘の故障増大の主な原因であるという説も有力である。大谷翔平の故障もその説を裏付ける傍証になるだろう。
豪速球投手がますます脚光を浴びる昨今の風潮のなかで、ナックルボーラーの希少価値は高まっていくかもしれない。40歳以降に121勝を挙げたフィル・ニークロ氏や42歳でオールスターに選出されたティム・ウェイクフィールド氏など、ナックルボーラーは息が長いのが特徴である。
文・角谷剛