米高校野球では前腕の骨がない選手もプレー、視覚障害者野球はイタリアが第一人者。日本と世界、障害者野球の現在地とは
両腕の橈骨(とうこつ)を持たずに生まれた16歳の少年がアメリカ合衆国の高校野球でプレーしていることが話題となっている。公式サイト『MLB.com』は1日(日本時間2日)、イリノイ州の高校でプレーするマイショーン・ドージャー君を紹介する記事を発表した。世界中で親しまれる野球だが、全ての子供たちが野球をプレーできる環境作りはまだまだ発展途上のようだ。
2019/05/06
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ミラクル・リーグとは? 視覚障害者野球はイタリアが世界をリード
アメリカ合衆国には、日本の障害者野球のように通常の野球に近いルールで行われる「障害者専用」のリーグは存在しないが、ジョージア州で始まったミラクル・リーグが知られている。1999年には障害を持つ子供たちを中心に結成された4チームが発足し、身体的特徴による不公平さや安全性の問題などを解決すべく様々な特殊ルールを制定している。
主なルールとしては、プラスチック製のボールとバットを使い、各イニングの攻撃ではチームの全員が打席に立つ。塁上でアウトになることはなく、全ての選手が得点するまでイニングは続く。”バディー”と呼ばれるボランティアがグラウンドでプレーの補助にあたるといった具合で、いかなる障害を持っていても等しく楽しめる形になっている。
世界一の野球大国・アメリカ合衆国だが、障害者野球や軟式球は未開の分野。ミラクル・リーグの取り組みは素晴らしい成果をあげているものの、軍事任務の際の負傷などから野球の道をあきらめた選手たちも再びプレーできるような環境作りが期待される。
やや意外に思われるかもしれないが、視覚障害者野球の分野で世界をリードするのはイタリアだ。1997年に世界で初めてリーグが創立されると、2019年も11チームが2つに分かれて行うレギュラーシーズン、上位チームによる決勝トーナメントが行われる形で開催されている。
試合で使用される軟式球の中には鈴が入っており、打者は金属バットでノックするように打つ。その後は音を頼りに守備が行われるが、ほとんどのケースで野手は体を投げだして打球を止めに行くため、全てのプレーが見ごたえ十分だ。