安打製造機・イチローは健在、5年ぶりに5月の月間打率3割越え【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、マイアミ・マーリンズで若手選手に見劣りしないプレーを見せているイチローの月間打率について考えてみた。
2015/06/03
Getty Images
MLBで輝き続けるイチロー
2001年にMLBに移籍してからも、5月のイチローは特に恐ろしい存在だった。
新庄剛志とともに初のNPB出身野手としてMLBにデビューしたイチローは、1番右翼で開幕戦を迎える。
開幕前には「彼はジョニー・デイモン(通算打率.284)くらいはやるのか」と俊足外野手との比較をされていたが、ふたを開ければ4月は早くも.336と結果を出す。
5月はさらに打率を上げる。月間打率.379。マリナーズのピネラ監督を「やつは毎日マルチ(複数安打)を打つのだから!」とうならせた。
デビュー年は首位打者、最多安打、盗塁王、新人王、MVPに輝いた。日本の安打製造機は、一気にMLBのニュースターになった。
以後も3割200本をキープし続けたイチローが、歴史的な大打者の仲間入りをしたのは2004年。
このシーズン、4月こそ.255と平凡な打率だったが、5月に.400、月間50安打を記録。一気に調子を上げて、従来のシーズン通算安打記録を5本上回る262安打のMLB記録を樹立した。
これまでのレコード・ホルダー、ジョージ・シスラーは1920年代の打者。野球の質そのものが当時とは大きく異なっていたため、この記録はアンタッチャブルだと思われていたが、イチローは8月に打率.463と驚異的な数字を叩き出して記録を破った。
この時期から「イチローはスロースターター」との評判が定着する。4月は調子が悪くても、5月に入ると調子が上がり、3割の大台に乗るようになった。
2009年は開幕前のWBCのために調整が遅れた。イチローは日の丸を背負ったプレッシャーが原因で胃潰瘍になり、MLBに来て初の故障者リスト入りをして出遅れた。それでも5月には完全復調し、売り出し中のミネソタ・ツインズ、ジョー・マウアーと激しい首位打者争いを繰り広げた。
2011年は4月から好調で、異例なことに5月にスランプに陥る。そしてついにMLBでの3割、200本安打が途切れた。37歳のシーズンだった。
以後、イチローはゆるやかに下降線をたどりながら現役生活を続けている。ここ2年は出場機会も限られ、規定打席にも達していない。
しかしながら打席で見せる一瞬のひらめきや、俊敏な走塁は、全盛期の輝きを思い起こさせる。
イチローは今年の5月、実に5年ぶりに月間3割をクリアした。打数は少なく、代打での起用も多い中で、安打製造機が健在であることをアピールしてみせた。
単なるレジェンドではなく、今も一線級の打者であることを証明し続けている。
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