MLB球宴視聴率の低迷が示す、ベースボールの魅力の本質【豊浦彰太郎の Ball Game Biz】
球宴の視聴率低迷が続いている。WEBで他地区のスターをいつでもどこでも見れることも影響していそうだ。一方で開催都市は盛り上がり、誘致合戦も激化している。やはりファンはライブに魅せられるのではないか。
2015/08/01
Getty Images
ベースボールは時差なくライブで見る
視聴率の低下が叫ばれる一方で、球宴誘致活動は活発化している。かつては、球宴のホスト都市の決定は概ね開催の約2年前だったが、今年1月に現在のロブ・マンフレッドがコミッショナーに就任してからは、立て続けに2016年のサンディエゴ(ペトコ・パーク)、2017年のマイアミ(マーリンズ・パーク)、2018年のワシントンDC(ナショナルズ・パーク)までが一気に決まった。先の先まで決まったということは、それだけ誘致希望が多かったことを示しているのではないか。
球宴は開催都市の球団にとって、依然おいしいコンテンツだ。そのテレビ放映権料やチケット、関連グッズの売り上げは全てMLB機構の懐に入るが、副次的な収入を開催地球団にもたらすからだ。例えば、球宴チケット購入優先権を付与することにより、年間チケットのセールスを有利に進めることができる。そして、何より地元の野球人気を喚起できる。その結果、球宴開催による地元経済への経済効果も莫大で、一般的には6000万ドルを超えると言われている。2013年のニューヨークのケースにおいては、「1.9億ドルにおよぶ」と、あの『ウォールストリート・ジャーナル』は報じていた。開催都市は昔同様に燃えているのだ。
これらを総合すると、以下の仮説が導き出せる。「ファンは、スターが揃うイベント自体には以前ほどに魅了されてはいない。しかし、彼らを生で見る機会には強くひきつけられる」
そう言えば、近年MLBのローカルテレビ放映権料が異常なまでに上昇した背景に、視聴者の指向があるという。ドラマやショーは、人々は録画しておいて時間のある時に見ようとする。その場合、CMは飛ばされてしまう。しかし、野球を代表とするスポーツにおいては、多くの視聴者はライブでの観戦を好む。CMをスキップされないスポーツ番組は、スポンサーを引き付けるコンテンツなのだ。
やはり、ベースボールとは時差なくライブで、メディアを通じてよりも現場でその興奮を味わうにしくはない娯楽なのだ。