【2022日本ハム・戦力分析】新庄ビッグボスの下で再建を目指す日本ハム。データ面から見た現状戦力は?
2022/03/11
産経新聞社、DELTA・竹下弘道
4.今季の選手供給の見込みは?
ここまでに論じた補強ポイントを踏まえて、日本ハムが新しい選手をどれだけ用意できるかを見ていきたい。一軍に選手を供給する手段は、①二軍から選手を引き上げる、②ドラフトで獲得する、③国内外の他チームから獲得する、の3つだけだ。それぞれの手段について、どのような選手供給が見込まれるかを見ていこう。
まずは二軍だ。二軍において得失点差への寄与が優れる選手は、一軍でも得失点差を改善する見込みが強いと言える。ここでは2021年の二軍において、各選手が得失点差に何点分の寄与をもたらしたかを調べた[4]。統計的に野球選手は若いほど成長の余地があるため、年齢も併記した(図5)。若くて優秀な左上の選手は将来的な一軍定着を期待しやすいと言える。
目を引くのが21歳の万波中正だ。両翼で標準以上の守備力に加えて、二軍トップレベルの長距離打者でもある。昨季は一軍でも5HRを記録するなど、一軍レベルの投手に一定のアジャストを見せている点も心強い。コンタクトは二軍の中でも標準以下に留まるなど粗削りな部分はあるが、最優先で使っていきたい選手だ。
もう一人、両翼で特筆すべき若手が24歳の今川優馬だ。万波に匹敵する長距離砲である一方で、コンタクトを苦にしていないのが特徴である。守備の評価は高くないものの、守備指標UZRは標準以上で苦手な形跡は見えない。選球眼に課題があり、一軍へのアジャストに苦戦しているが、両翼でプラスを稼げるポテンシャルはある選手だろう。
両翼には有望株が揃う一方、捕手と二遊間は厳しい状況だ。捕手は田宮裕涼と古川裕大、二塁手は難波侑平、遊撃手は上野響平が起用されたが、戦力化にはまだ時間がかかりそうだ。よって、今季中の捕手と二遊間の選手供給は見込みづらい状況と言える。
次はドラフトを見ていこう(図6)。育成契約の選手が1年目から戦力になるケースは稀なので、支配下契約の選手のみを見ていきたい。
1位指名は高卒投手の達孝太。野手と比べて投手には余裕がある現状を踏まえると、来季よりも長期的な底上げを重視したと見られる。「ドラフト1位は編成に関係なく最も優れた選手を指名する」という、日本ハムの編成思想がよく表れた指名と言えそうだ。
補強ポイントへの動きを見ると、二遊間に対しては3位の水野達稀、9位の上川畑大悟と即戦力選手を2人指名している。一方、捕手と両翼では即戦力選手の指名はなく、高校生で外野経験のある2位の有薗直輝を指名したのみとなった。
最後に補強を確認する(図7)。こちらも育成契約の選手が1年目から戦力になるケースは稀なので、支配下契約の選手だけを見ていく。
補強では外国人選手4人を獲得した。投手は先発救援のどちらもできるジョン・ガントとコディ・ポンセを獲得。野手は一塁手のレナート・ヌニエスに加えて、ユーティリティのアリスメンディ・アルカンタラを獲得した。
補強ポイントに対する動きという観点で言えば、アルカンタラは二遊間の底上げに貢献できる可能性がある。ただし、30代で日本プロ野球に来る外国人選手は、遊撃手では守備が通用しないのが恒例である。遊撃手の底上げはあまり期待しない方がいいかもしれない。
なお、ヌニエスは元々三塁手だが、2019年以降は一塁手と指名打者での出場が大半だ。日本ハムでもこの2ポジションで起用されると見られるが、指名打者を底上げできれば、近藤を押し出して両翼を底上げできる。2019年にはMLBで31HRを記録するなど、打撃面では実績十分の選手なので、期待は大きいと言える。