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安く仕入れて大きく伸ばす――北海道日本ハムを支える「高卒力」

パリーグのクライマックスシリーズファイナルステージで惜しくも敗れたファイターズ。しかし、その未来は明るい。今季も中島や西川など高卒選手が順調に力を伸ばし、主力として経験を積んだ1年だった。この起用法に、ファイターズの育成戦略が見て取れる。

2014/10/29

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才能豊かな選手を育て上げる、ファイターズ鎌ヶ谷〝工場〟

 3位に終わったとはいえ、北海道移転11年目の今季、日本ハムは最後までパ・リーグを盛り上げた。クライマックスシリーズファーストステージでは2位オリックスを退け、王者ソフトバンクとのファイナルステージでも最終戦まで持ち込む粘りを見せた。
 
 シーズン最終戦となった第6戦の先発メンバーを見て、ひとつの感慨を抱いた。
 
「これは鎌ヶ谷が大一番に臨むということなのだ」
 
 鎌ヶ谷というのは、日本ハムの二軍施設が存在する千葉県の街のことだ。
 
(右)西川遥輝  高卒4年目
(ニ)中島卓也  高卒6年目
(中)陽岱鋼   高卒9年目
(左)中田翔   高卒7年目
(一)小谷野栄一 大卒12年目
(指)ミランダ  外国人
(三)近藤健介  高卒3年目
(遊)大引啓次  移籍組
(捕)市川友也  移籍組
(投)上沢直之  高卒3年目
 
 先発の上沢も含めて、スタメンには6人の生え抜き高卒選手が名を連ねていた。ソフトバンクは3人。日本ハムは高卒選手を中核に据え、長いシーズンを戦ってきたのだ。
 
 7年目にして初タイトル、打点王を獲得した中田も含め、高卒の若手たちは森本稀哲や田中賢介がそうだったように、鎌ヶ谷で土と汗にまみれて一人前になった。
 
 限られた戦力で戦う日本ハムがつねに上位争いを演じられるのは、「鎌ヶ谷の育成」が機能しているからだ。
 
 若い好素材を積極的に仕入れて鎌ヶ谷で商品化し、自信を持って札幌に送り出す――。
 
 この一連の流れは、ドラフト戦略にも明確に表われている。
 
 過去10年のドラフトでの高卒選手獲得率(育成枠を除く)を調べると、日本ハムはソフトバンクに次ぐ高い数字を残していた。
 
1位●ソフトバンク獲得総数59人(育成37人)
高卒32人(54%) 大卒17人(29%) 社会人10人(17%)
 
2位●日本ハム76人(育成0人)
高卒36人(47%) 大卒23人(30%) 社会人17人(22%)
 
3位●広島57人(育成16人)
高卒26人(46%) 大卒17人(39%) 社会人14人(25%)
 
4位●巨人60人(育成42人)
高卒25人(42%) 大卒21人(35%) 社会人14人(23%)
 
5位●楽天67人(育成12人)
高卒27人(40%) 大卒21人(31%) 社会人19人(28%)
 
6位●オリックス64人(6人)
高卒25人(39%) 大卒11人(17%) 社会人28人(44%)
 
7位●西武60人(育成3人)
高卒23人(38%) 大卒21人(35%) 社会人16人(27%)
 
8位●阪神56人(育成10人)
高卒21人(38%) 大卒24人(43%) 社会人11人(20%)
 
9位●横浜65人(育成11人)
高卒23人(35%) 大卒16人(25%) 社会人26人(40%)
 
10位●中日69人(育成12人)
高卒24人(35%) 大卒24人(35%) 社会人21人(30%)
 
11位●ヤクルト62人(育成12人)
高卒20人(32%) 大卒16人(26%) 社会人26人(42%)
 
12位●ロッテ61人(育成18人)
高卒18人(30%) 大卒23人(38%) 社会人20人(33%)
※今年の指名選手は全員が入団したと仮定。
 
 日本ハムが高卒選手を重視するのは、大卒や社会人出身者に比べて獲得経費が安上がりで、また伸びしろが大きいという理由がある。
 
 伸びしろが大きいというのは、鎌ヶ谷での育成に絶対の自信を持っているということ。安く仕入れて大きく伸ばす――。これが日本ハムの戦略だ。
 
 日本ハムは12球団の中で唯一、育成枠を使っていない。それは「実戦経験を積ませてこそ才能は伸びる」という哲学があるからだ。
 
 二軍の試合数は限られていて、少ないチャンスを多くの選手で奪い合っていては成長が妨げられる。そのために意図して少数精鋭を維持している。

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