2015年NPBクローザーの通信簿。セーブ数だけではわからない、クローザーの真の実力【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は今シーズンのセパのクローザーについてだ。
2015/12/09
ベースボールチャンネル編集部
同じセーブ王でも安定感に差
次にセリーグを見ていこう。
セの最多セーブはヤクルトのバーネットと阪神の呉昇桓が分け合った。しかし二人のセーブ機会での投球内容は大きく異なっている。
バーネットは成功率100%、失点も3試合だけ、それぞれ1失点したのみ。対戦相手はバーネットがマウンドに上がっただけで、あきらめムードになっていたことだろう。それほどの安定感があった。
一方の呉昇桓は4度失敗。それ以上に目につくのは失点試合が12もあることだ。被本塁打も6本。その他の登板機会のほうが防御率ははるかに良く、セーブ機会では相当なプレッシャーがかかっていたのではないかと思われる。
むしろ安定感でいえば、DeNAの山﨑康晃のほうが呉昇桓よりもずっと上だ。失敗は9月4日の巨人戦だけ。自責点もバーネットと並ぶ最少の3。山崎はその他の登板機会ではよく打たれたが、クローザーを任されるとほぼ完ぺきに抑えている。適性があったのだろう。
巨人の澤村はセーブ機会だけでなく、同点でマウンドに上がることが多かった。勝ち星が7つもあることがそれを物語っている。9月23日の阪神戦ではセーブに失敗するが裏に味方が逆転して勝ち星が転がり込んでいる。打たれたのは呉昇桓だった。
広島は当初、クローザーに予定していたヒースが離脱したため、5月からセットアッパーの中﨑が配置転換。難しいポジションを任され当初は不安定だったが、8月27日以降は無失点だった。先発の頭数がそろっていたが、やはり絶対的なクローザーがすぐに確立できなかったことが、ポストシーズン進出を逃した要因でもある。
中日は、NPBのセーブ記録を持つ岩瀬仁紀が今季絶望だったため、クローザーを固定できなかった。福谷の他に田島慎二が9セーブ、浅尾拓也が3セーブを挙げている。
福谷浩司は失敗は4度だけだが、自責点は12点。防御率も4.98。仕事を果たしたとは言えない。
こうしてみると、クローザーの出来がペナントレースを左右していることが実感できる。
クローザーは激務であり、短期間で潰れる投手も多い。来季はどんな顔ぶれが、試合終盤のマウンドに上がるだろうか。