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起用法や言葉ひとつで故障が防げる? 落合博満氏が語る、指導者が選手を故障させる“便利屋”的な投手起用の悪循環【横尾弘一の野球のミカタ】

故障者をいかに減らして、シーズンを戦うか。長丁場のペナントレースで結果を残す上で大きなポイントになる。

2016/05/27

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どんな場面でも投げ続けた結果……

 長いペナントレースで、選手のケガや故障は避けられない。トレーニングやコンディショニングの分野を専門家が担うようになった昨今、選手たちのプレー環境は飛躍的に整備されているが、それでも故障者がゼロというわけにはいかない。場合によってはチームの順位をも左右するゆえ、どの球団の首脳陣も最大の注意を払っている選手のコンディショニングに関して、中日ドラゴンズの落合博満GMから興味深い話を聞いた。
 
「故障の原因を指導者が作ってしまうことがある。実は、このケースの故障が最も多いと言っても過言ではないんだけれど、それを自覚している指導者は意外と少ないんだ」
 
 指導者が選手を故障させる!? 中堅クラスの投手を例にした落合GMの説明はこうだ。
 
 中継ぎとして実績を上げ、年俸も大幅にアップした20代後半の投手をイメージしてほしい。やる気満々でシーズンを迎えたところ、投手コーチからこんな言葉をかけられる。
 
「監督は、今季は勝ちゲームの時にしかおまえを使わないと言っている。しんどい登板が続くと思うが頑張ってくれ」
 
 そうしてペナントレースが開幕したが、投打の歯車が今ひとつ噛み合わず、チームはいきなり借金(負け越し)生活を強いられてしまう。そんな中で、この投手も勝ちゲームだけではなく、同点、あるいは僅差でリードを許している場面でも起用される。
 
 はじめのうちは「チームの状態もきっとよくなるはずだから、それまでは元気な自分が頑張ろう」と考え、どんな場面でも精一杯の投球を続ける。次第にチームの成績も上向いてきたが、なかなか起用法は定まらない。ただ、投げてナンボのプロの世界だ。あまり疑問に感じることはなく、マウンドでは力投を見せていた。
 
 ところが、逆襲に転じて上位争いに加わるようになっても、この投手は“便利屋”的な起用ばかりされる。試合数の半分以上に登板する中で、先発投手が序盤に崩れた際にロング・リリーフを命じられ、さすがに「ここも俺かよ」と悶々とした気持ちでマウンドに立つと、肩にピリッと痛みが走る。そのうちに腕も振れなくなり、ストレートが走らなくなって打ち込まれる。不安になってトレーナーに診てもらうと、肩には炎症が起きていた。ほどなく、一軍登録を抹消される。

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