金村尚真のボールは一級品。伸びしろ十分「勝てるピッチャー」としての期待【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#228】
交流戦明けから、なかなか波に乗れていないファイターズ。そんななか、金村尚真がついに今季先発初勝利を収めた。課題はまだまだ多いがこれからのファイターズを背負う投手。期待値が非常に高い。
2024/07/06
産経新聞社
勝てる投手は何がすごいのか?
僕はプロ野球選手やプロOBに定点観測的に質問していることがいくつかあって、そのひとつが「勝てるピッチャーというのは何なのか?」なのだ。これは興味深いと思いませんか? プロには「勝てるピッチャー」というのが存在するのだ。まぁ、要素としては球威・球速であったり、球種の豊富さであったり、決め球のエグさであったり、スタミナであったり、セルフコントロールや闘争心であったり、打者心理の読みであったり、様々なことが挙げられる。もちろん同じ質問にどう答えるかは選手・OBそれぞれの野球観に拠る。例えば名伯楽と呼ばれた投手コーチ、小谷正勝さんは「メンタル」「闘争心」を真っ先に挙げられた。
「コントロール」「制球力」を挙げる方も意外なほど多かった。僕が聞いたなかでは荒木大輔さんがそれを指摘された。ピッチャーには「絶対に間違っちゃいけない場面」というのがあるというのだ。勝負どころ。2日のロッテ13回戦なら「無死満塁でソト」だったろう。大量点をバックにしていたり、楽な場面ではピッチャーというのはどんどん攻めていけるそうだ。強い気持ちで投げられる。当然、生きた球が行く。一方、心臓がギュッと締め付けられるようなプレッシャーのかかる場面もある。そこできっちり投げられるか。まぁ、小谷さん流に「闘争心」を込めて制球できるか、と表現することも可能だろう。荒木さんは「勝てない投手はここが甘い」と言った。間違っちゃいけない場面で間違うのだ。カウント球がいいコースに決まっていたのに、結果球が甘くなる。それまでどんなに好投していても、大事な場面で痛打を食らい、負けがついてしまう。
まぁ、冒頭申し上げた通り、試合は「投打のかみ合わせ」がうまくいくかどうかなので、「メンタル」も「制球力」も素晴らしい投手が負けてしまう場合だってある。そこら辺は一概には言えないことだ。だけど、キャリアが加わってくると、投手も野手も試合の流れを読むようになる。勝敗と関係ない場面で剛速球を投げたり、勝敗と関係ない場面でホームランをかっ飛ばしたり、それはエンタメとしては魅力に富むものではあるけれど、プロで長くメシを食っていくにはちょっと違う技能が要る。ここと言う場面で抑え、ここと言う場面で打つ。
同シリーズ、7/4のロッテ15回戦、上原健太の投球はそこがもったいなかった。5回1/3を3失点にまとめたのだから試合は作っている。が、スミ1の後、味方がロッテ西野勇士を攻めあぐねている以上、勝負どころで粘らなきゃいけなかった。金村も上原もボールは一級品だと思う。だけど、まだまだ伸びしろがある。勉強勉強。「勝てるピッチャー」になってほしい。それは試合を読み、勝負どころでエグいピッチャーじゃないかと思う。よくエース級の投手は「ギアを変える」という言い方をする。僕ら素人は球威・球速のことばかりイメージするが、そう単純なことではなさそうだ。僕は強い心で「打てないところに打てないボールを投じ切る」金村尚真が見たいし、上原健太が見たい。そこを目指してほしい。望み過ぎだろうか。