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オリックスと大型契約を結んだ中島裕之――見えぬリスクをはらんだ巨額投資は吉と出るか?

中島裕之内野手がオリックスと大型契約を結び、日本球界復帰を決断した。これまで日本人大リーガーの国内復帰は、思うような結果に結び付いていない。中島自身、この契約通りの結果を残せるのか? またオリックスの巨額投資は正しかったのか、否か。すべては2015年シーズンにかかっている。

2014/12/08

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不完全燃焼に終わった、中島のメジャー挑戦

 アスレチックスとの2年契約を満了した中島裕之内野手が、報道によれば3年総額12億円という大型契約をオリックスと結び、日本球界復帰を決断した。米国での2年間は度重なるケガにも苦しめられ、結局1試合もメジャーのグラウンドに立つことはかなわなかった。

 米1年目はキャンプ中に右太ももを痛めて出遅れて3A暮らし。再起を期した2年目は、そのさらに下の2Aでシーズンのほとんどを過ごした。

 マイナー2年間通算での成績は175試合で、打率.267、10本塁打、69打点。メジャーで打者を評価する際に信頼される指標の一つ、OPS(出塁率+長打率)は.682にとどまった。
 平均値とされる.710を下回る数字だ。

 アスレチックスには2年総額650万ドル(約7億8600万円)の契約で入団した。全くの期待外れとなってしまった2年間。オフに入り、球団が保有していた来季年俸550万ドル(約6億6600万円)でのオプションを破棄したのは、当然ともいえた。

 紆余屈折を経てのメジャー挑戦だけに、悔しさは大きいだろう。

 中島は一度は11年オフにポスティング・システムでのメジャー挑戦を正式に表明。球団の申請に応じ、ヤンキースが入札額250万ドルで交渉権を獲得した。

 ところが、ヤンキース側が中島に提示した条件はレギュラー野手ではなく、内野の控えとしてのもの。当時ジーター、A・ロドリゲスら高齢化していた三遊間のバックアップの役割だった。レギュラーとしての出場を求めていた中島サイドとの交渉は決裂。翌オフに取得した海外FA権を行使し、2年越しで実現させた夢舞台への挑戦だった。

「メジャーでやりたい気持ちはあった。でも2年間やって、あまり長いこといてもいけないかなと…」

 オリックス入団会見では、偽らざる正直な気持ちをそう口にしている。

マネーゲームを制したオリックス

 渡米前年までは7年間で6度も打率3割以上をマークした強打者。国内では無双を誇っていただけに、争奪戦は熾烈を極めた。

 古巣・西武や、出身地である関西の雄・阪神からは熱烈なラブコールを受けた。最終的には単年あたりでは4億円近い超巨額契約を提示したオリックスが、マネーゲームを制した。

 ここで一つの疑問が沸く。
 中島の西武最終年の年俸は2億8000万円+出来高。全く不本意な2年間をマイナーで過ごしながら、帰国後の条件はさらに上がっているのだ。

 ある球界関係者はこう指摘する。

「正直契約額に眉を潜める関係者は多い。アメリカで結果を残せなかった選手に与えるべき契約なのか、と。メジャー挑戦という行為自体に箔でもあるのか。選手のメジャー志向に拍車をかけかねない」

 まず断わっておきたいが、中島本人を責めようという思いはない。提示された条件の中から最も良い条件を選ぶのは、プロ選手として当然の行為だし、ある意味健全な市場原理のあり方だ。

 今回の交渉で、中島は米球界の大物代理人であるスコット・ボラス氏と契約を新たに結び、ボラス氏のグループを交渉の窓口とした。高額な契約を次々と勝ち取り、らつ腕で知られる。

 早くから獲得に名乗りを挙げていた阪神は、条件が高騰する中で「一定以上のマネーゲームには付き合わない」と表明。必要以上の出費を押さえ、適切な投資とするスタイルを鮮明にした。交渉の裏側は当然詳細には明かされなかったが、結果的にオリックスが周囲を驚かせる大型契約を成立させた。

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