大谷翔平だけではない、メジャースカウト注目の日本人選手。筒香嘉智、千賀滉大、菊池涼介の評価とは
プロ・アマを問わず、球場に足を運ぶと、必ずメジャースカウトの姿を目にする。アメリカから調査に来るスカウトもいれば、日本に駐留するアメリカ人、現地で採用されているスカウトなど様々だ。ある日の球場で遭遇したスカウトに日本人選手についての評価を聞いた。
2016/07/18
メジャースカウトが評価する、ソフトバンクの無敗投手
「もともと球威があって、フォークがいい投手でしたが、今年はストレートとフォークだけのピッチャーではなくなってきました」
そう評価されているのがソフトバンクの千賀滉大だ。
オールスターを終えるまで、8勝0敗。防御率2.64と好成績を挙げている。オールスター前の最終登板のロッテ戦では8回を0封するなど、圧巻のピッチングを見せている。なぜ、オールスターに選ばれていないのかと不思議に思うほどだが、メジャースカウトにとっても注目の選手だ。
「千賀投手が投げるフォークは、向こうではあまりない球です。空振りを取れる、十分に通用する要素を持っています。昨季までは、ストレートの球威とフォークで打ち取っていく、いわば、試合の終盤に出てくるようなピッチングをしていましたが、今年は、カットボールとスライダーをうまく使って、出し入れができるようになっています」。
千賀にとって、プラス要素になりそうなのが高校時代からさほど有名ではないということだ。近年の日本代表をする投手たちとは大きく異なるアドバンテージがある。
というのも、松坂大輔(ソフトバンク)やダルビッシュ有(レンジャーズ)、田中将大(ヤンキース)、前田健太(ドジャース)など、日本球界の大エースたちには、若いうちからエースとして君臨してきたため登板機会が多かった。千賀は無名だった高校時代も含めて、体に負担を掛けない野球人生を歩んでいる。これは大きなプラスだろう。
早期のメジャー挑戦なら長く活躍することができるかもしれない。
それについては西武の菊池も同じである。
6月23日にわき腹を痛めて抹消されたが、菊池のプロ入り以降の登板は平凡な数字に収まっている。180イニング以上を投げたシーズンがこれまで一度もないし、チームのために酷使して甲子園で投げていた時を思えば、彼の体は比較的健全といえるだろう。
さらに今季は、7回以降に痛打されるケースを考慮し、西武の首脳陣たちが菊池の完投をなるべく回避するという傾向もある。「こっちとしてはありがたい」と前出のメジャースカウトは語っているが、菊池も評価対象選手だ。
「千賀投手と同じで、今年の菊池投手は、速い球を投げるだけのピッチャーではなくなってきました。1試合を考えて投げるようになっています。27個のアウトをすべて三振で獲りにいくようなピッチャーでしたが、下位打線はなるべく少ない球数にしようとか、ファールでカウントを稼ごうとするようになりました。それでいて、空振りが欲しいときは取りにいけますから、ピッチングを纏められるようになっています」
いつ彼らが海を渡るかは「運命」としか言いようがないが、アメリカの舞台で日本人が活躍することは、野球界そのものの底を引き上げる原動力になることは間違いない。
イチローの通算安打世界記録達成の報道では「イチローが最初からメジャーに行っていたら、どうなっていたか」という今さら語っても意味のない議論が展開されたりしていたが、もし、その気持ちを抱くのなら、日本の逸材たちの一日も早いメジャー挑戦を願うべきだろう。