今宮健太、後輩のために潜在能力を爆発させた圧巻の10球。「絶対に負け投手にしたくなかった」【夏の甲子園の記憶】
今や福岡ソフトバンクホークスの不動の遊撃手となった今宮健太。高校3年の夏、眠っていた潜在能力を遂に爆発させた。
2016/08/20
良くも悪くも高校生らしからぬ選手
第一印象は“いいかげんなヤツ”だった。
類いまれなポテンシャルをちらつかせ、確かに逸材ではあったが、その第一印象から、今の彼を想像することはできなかった
ソフトバンクのショートストップを務める、今宮健太を初めて見たときのことだ。
場所は神宮球場。高校1年生秋のことである。
神宮大会高校の部1回戦に登場した今宮は、「1番・投手」として出場。
高校野球でも、その役を務める選手はなかなかいないが、その起用をされているだけで、彼がどれほどの選手であるかは理解ができた。
とはいえ、そのプレースタイルは、とても高校生らしいとは言いがたかった。
というのも、今宮はシングルヒットを放つと、さも自身がプロ野球選手であるかのように、トロトロとした走塁で、一塁へ到達したのだった。
走者になっても、彼のやる気のなさは顕著だった。
第二リードを取らない、打球がボールに当たるのを待っているだけだった。
小さい体でも振り負けることのない力強いスイングやマウンドでのパワーピッチは見るものを魅了するものがあったが、精神性がまるでなかった。ただ好き勝手に野球をやっている選手にしか映らなかったのだ。
もっとも、結果は想像通りだった。
確かに1年の秋に県と九州大会を制覇し、神宮大会へ進出してきたが、翌年春のセンバツでは初戦敗退。印象に残るような活躍はしていない。2年夏の甲子園を逃し、翌春のセンバツでも甲子園には出てきたが、2回戦で菊池雄星(西武)のいる花巻東に完敗。今宮は何も残すことなく、甲子園を後にしていた。