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逆転新人王なるか。オリックス、“和製大砲”吉田正尚に託した球団の想い【どら増田のオリ熱コラム#84】

オリックスのドラフト1位ルーキー、吉田正尚が8月12日に約3カ月半振りに1軍復帰してから、29試合でホームラン9本と驚異的な記録を残している。打率も15日現在、.301と好調をキープしており、このペースが最終戦まで続けば、一発逆転の新人王獲得の可能性も十分考えられる。

2016/09/17

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どら増田



“和製大砲”獲得にこだわったドラフト戦略

「どうしても和製大砲がほしかったんです」
 
 オリックスの加藤康幸編成部長が語ったのは昨年末の新入団選手発表会見後のことだった。

「外国人の大砲もいいんですけど、長期的に見たらウチはT-岡田の次の和製大砲がいない。ファンの皆さんは一発に夢を感じるような日本人の大砲が見たいと思うんですよ。それが1位の吉田正尚です」
 
 2014年から編成の指揮を執っている加藤編成部長が描く球団戦略には、これまでのオリックスには欠けていたファンが思い入れを持てるようなストーリー性を重視する特徴がある。例えば、昨年のドラフトでは吉田の他にも、同年夏の甲子園で活躍した吉田凌(東海大相模、ドラフト5位)と佐藤世那(仙台育英、ドラフト6位)を獲得。ユニフォームの名前を「RYO」と「SENA」にして売り出しているほどだ。
 
 こうした加藤編成部長の思惑を背負って入団した吉田は、怪我による長期離脱はあったものの、8月12日の復帰からわずか29試合で9ホーマーと“和製大砲”の片鱗を見せている。
 
 とはいえ、当の吉田は、そんなチームの和製大砲としての期待を「予想していなかったこと」と、こう振り返っている。
 
「オリックスには糸井さん、T-岡田さん、駿太さんと左の素晴らしい外野手がたくさんいるので、こんなに高い評価(ドラフト1位)をいただけるとは思っていなかったんですよ」
 
 吉田がそう思ったのは、大学時代に自身が所属していた青山学院大が東都大学リーグの二部に所属していたからである。二部の選手である自分の評価がそう上がるわけではないと考えていたのだ。
 
 ただ、そんななかでも、アピールした試合がなかったわけでもなかった。
 
 そのゲームとは昨年6月29日に神宮球場で行われた大学日本代表とNPB選抜と壮行試合と、同年8月26日に甲子園で行われた高校日本代表との試合である。
 
 大学日本代表の4番だった吉田は、NPB選抜との壮行試合では高橋光成(西武)の147キロのストレートをフルスイングして右中間スタンドにホームラン。高校日本代表との試合でも、2本のホームランと強烈なインパクトを残したのだ。
  
 吉田が実感を込めて言う。
 
「僕が在籍していた青山学院大学は東都の二部で、そう注目されているわけではありませんでした。スカウトの方がたくさん集まるああいう壮行試合でアピールしなきゃいけないというのはありましたね。あのときにホームランを打ってなかったら今ここにいないかもしれない」

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