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丸佳浩、菊池涼介、田中広輔……5年先を見た一気通貫のスカウティングで、将来の主軸候補を発掘

カープが25年ぶりにリーグ優勝を果たした。その背景には、チームを陰で支えた人物たちがいた。

2016/10/02

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「丸?たいしたことない」といわれても揺らがなかった信念

 過去5年間をさかのぼると、今季起こったカープ躍進の予兆を見てとることができる。

 2011年、高卒4年目の丸佳浩が131試合に出場し、外野のレギュラーを奪取。翌年には野村祐輔と菊池涼介がルーキーとして入団している。2013年9月には高卒1年目の鈴木誠也がプロ初出場を果たし、その翌月、ドラフト3巡目でJR東日本から田中広輔を指名した。

「この選手は5年後、うちで今レギュラーを張っている選手の後継者になれるかと見ながら、獲得候補を探しています」

 チーム方針についてそう語るのは、苑田聡彦スカウト部長だ。今季四半世紀ぶりに果たした優勝の種は、5年以上前からまかれていたのである。

 苑田スカウト部長によれば、ドラフトで指名するのは高校生、そして高卒から社会人に進んだ選手が中心になる。それでも、「怪物」や「××二世」という仰々しい形容詞の大器ばかりに目をくれるのではない。もちろん、即戦力として期待できる大学生、社会人を集めるのに躍起になるわけでもない。

 カープの指名には、明確な指針がある。「今のチームにはどういう選手が必要なのか」というものだ。この点にこそ、チームづくりにおける哲学が透けて見える。

 苑田スカウト部長が説明する。

「一般的にいう『いい選手』ばかり集めても、ポジションが重複したら活躍の場がなくなってしまいます。いい選手ばかり追うのではなく、うちのチームのレギュラーが年をとってきた場合、あるいは思ったより力が伸びていないとき、そのポジションを補強していくのがカープの伝統です」

 カープのスカウトに求められるのは、とにかく試合や練習に何度も足を運び、自分の目で見抜くことだ。同時に一軍、二軍の状況を把握し、数年先に戦力になれる素材を発掘していく。そうして見つかったのが、今や打線の中心となっている丸である。

「丸? 大したことないですよ」

 まだ丸が高校生の頃、千葉経大附高野球部の松本吉啓監督は、称賛の言葉を送った苑田スカウトに対してそう返したことがある。

 二人の会話は、ボタンのかけ違いだった。指揮官はエース投手だった丸について答えた一方、苑田スカウト部長は外野手としての可能性を見出していたのだ。

 千葉の天台球場で丸がライトを守っているとき、返球の際に肩の強さを見て「これは抜けているな」と苑田スカウト部長は感じた。そうして、現チームの屋台骨は発掘された。

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