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ファイターズ日本一へ導いた、4番の一打。主役・中田の劇中で舞台装置の働きをした大谷【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#41】

10年ぶりの日本一に輝いた北海道日本ハムファイターズ。主役は大谷でもなく、レアードでもなく、やはりあの男だったのではないか。

2016/11/02

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シリーズの流れを変えた一打は?

 それがいきなり大谷で負けた。雨の影響もあったろうけど、それ以上にあの天才が緊張して固くなっていた。自らのミスで先に失点し、その後、松山竜平、エルドレッドにホームランを浴びる。大誤算だ。大谷で負けるとうちは総崩れになりかねない。
 
 続く第2戦は6回裏のビデオ判定で流れが変わった。重圧から先発・増井浩俊がエラー、またしてもエルドレッドに一発を食らう。1、2戦通じて広島は足でかきまわしてきた。向こうは普段着の野球、こちらは窮屈な借り着だ。完全に勢いづかせてしまった。下手したら1勝もできないまま一気にいかれるぞ。
 
 と、こういう形で舞台は北海道へ移る。敵は黒田博樹を立ててきた。忘れられないのは試合前、ライトの定位置に立ち、赤い応援席を背に悠然と遠投を繰り返していた姿だ。黒田の背中が強いメッセージを放つ。みんなで闘おう。もう、僕は文化放送の実況ブース(ゲスト解説でした)で、あ、これはやられるなぁと思った。
 
 事実、黒田には抑え込まれたのだ。黒田は打者・大谷に全球種を見せて降板する(6回裏、大谷の第3打席までこらえたが、両足がつっていた)という千両役者ぶり。大谷は「見せていただいて勉強になりました」。
 
 それがいつの間にか勝っていた。運命が反転したのはやっぱり8回裏の「大谷敬遠→中田2点タイムリー二塁打」だったか。大谷が敬遠されている間、中田翔はネクストで自分のヘソをのぞき込むように顔を伏せていた。最高度の集中だ。文化放送解説の山崎裕之さんは「(ジャクソンの)投球を見てなかったでしょ。リズムを合わせるのも大事なんだけどね」と言った。ここまで完全に「逆シリーズ男」にされている主砲。火を噴くのか、手玉に取られるのか。シリーズの行方だけでなく、中田の野球人生そのものがかかった打席だ。
 
 この試合は延長までもつれて、最後は大谷のサヨナラ打で決まるのだが、結局、シリーズを通じて大谷が殊勲者になったのはこの第3戦だけだ。マスコミの注目は「黒田vs大谷」であり、MVPは3ホームランのブランドン・レアードだったが、主役は間違いなく中田じゃなかったか。

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