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元ロッテ・香月良仁のプロ野球人生#2 隠していた左足の靭帯断裂、トライアウトを受けなかった理由

今季、千葉ロッテマリーンズを退団した香月良仁。自身の野球人生は、いつ途切れてもおかしくなかった。しかし運命的な野球人との出会い、さらに野球を諦めさせなかった今は亡き父の存在によって、香月はプロ野球という限られた人しかプレーできない世界に足を踏み入れることができた。

2016/11/23

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トライアウトを受けなかった理由

 この秋はもう一回体を作り直して、再び1軍でやりたいと考えていた。
 しかし、その希望はかなわなかった。所属していた千葉ロッテから10月1日、来季の契約は行わない旨が伝えられたのだ。
 
 戦力外通告から数日が経ったある日、ロッテ浦和の室内練習場で汗を流す彼に会った。
 表情は意外にもさっぱりしていて、何かを達観しているようにも見えた。
 
 トライアウトは受験しないとそのときに聞いた。
 数日後、彼は社会人野球時代を過ごした熊本に足を運んでいるが、そこで第2の人生について色々と話を詰めてきたようでもあった。
 
「(トライアウトが)面倒くさいとか、そこから逃げるとかでは全然ないんですよ。ただ、プロで8年間やって来たというのはあるし、相手から求められないと戻れない世界じゃないですか。だから僕の場合は本当に自分が欲しいなら獲りに来るだろうと。トライアウトを受けて、自分からお願いします、どこでもいいから獲ってくださいという考えではなかったんですよね。別に上から偉そうに言っているわけでは全然ないんですよ。でも本当に戦力として欲しいなら「テスト受けてみないか」とか話が来ても良いとは思うんですよね」
 
 今年のドラフトは例年になく豊作と言われた年だった。
 高校生から社会人まで特に投手に好素材が揃っていた。今季戦力外を受けた選手には不運だったと言えるだろう。
 しかし、香月には次の生活のイメージがそのときすでに湧いていた。
 
 熊本に一度帰った際に、彼の恩師である鮮ど市場ゴールデンラークスの代表であり、監督の田中敏弘と会ってきたのだ。
 
 そこで条件面と自分のやりたいことを彼に伝えた。すると田中の答えはこうだった。
「それでもいいから戻って来てくれ」
 その一言がうれしかった。
「けっしてプロの道を諦めたわけじゃないですけど、ぶっちゃけこの2、3日(秋季キャンプの終了時期)が本当の意味でタイムリミットになるわけじゃないですか。その中で決めていたのは、このままオファーがなければ熊本に帰る。自分の中では向こう(プロのチーム)から『欲しい』と言われなければ別にいいかなっていうシフトチェンジがもう出来ていたんでしょうね。だから不思議なんですけど後ろ向きな気持ちは全然ないですよ」

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