金子千尋が〝援護率〟ダントツの1位――「運」も実力のうち【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回のテーマは、『援護率』だ。どの投手が打線の援護に恵まれているか、もしくは恵まれていないかを測る、一つの指標ともなる。
2015/01/09
援護に恵まれる投手、恵まれない投手
野球の新しいデータ分析の体系であるセイバー・メトリクスの世界では、投手の「勝敗」、「勝率」は、投手の実力を測る指標としてはほとんど評価されていない。
「運」に左右される要素が大きすぎるからだ。
相手チームを1点に抑えて完投しても、相手投手が自軍を完封すれば負けがつく。9点取られても、味方が10点取ってくれれば勝ちがつく。
強力打線を持つチームの投手は、そうでないチームの投手より勝ち星が増えることが多い。
「運」が強いことは、名選手の条件だとも言われるが、少なくとも勝敗は、「実力」を正確に反映した数値とは言えない、ということだ。
投手成績がいかに「運」に左右されているのかを見るために、昨年、NPBで規定投球回数に達した投手たちの「援護点」「援護率」と「勝敗」「防御率」の関係についてみていこう。
「援護点」はMLBで「RS=Run Support」と言う。その投手が投げていた間に味方が取ってくれた点のことだ。「援護点」が多ければ、投手に勝ちがつく可能性が高い。
「援護率」は、「防御率」同様の計算で、9回あたりの「援護点」の数値を求めたもの。
「援護率」から「防御率」を引くことで、その選手の「運の良し悪し」が導き出される。
その「差異」の順に、ランキングした。
まずパリーグからだ。
金子千尋が防御率1位に加えて、「差異」でも断トツの1位。こういうことはよくある。一昨年の楽天、田中将大は「防御率」は1.27だったが、「援護率」もダントツの6.22だった。24勝0敗は当然の結果だった。
絶対的なエースが投げるときに、味方打線が活発に打つことはよくあるのだ。
テンポが良いから、とか、エースの黒星をつけさせるわけにいかないと打者が奮起するから、とか言われているが、本当のところはわからない。
3位のディクソンは「差異」が+1.52あるのに負け越し。これは「援護点」が偏っていたことを意味する。
昨年8月30日の西武戦でディクソンは1失点で完投したが、味方は15点も援護してくれた。ディクソンは「その点数を他の試合にも振り分けてくれたらいいのに」と思っただろう。それ以外の登板ではむしろ運が悪かったのだ。
この表で見ると昨年西武からロッテに移籍した涌井は、成績もよくなかったが、「運」も悪かったと言える。
実は涌井は、一昨年も「自責点」40に対して「援護点」は32しかなかった(救援での成績も含まれる)。
なぜか涌井が投げると、味方が点を取ってくれないのだ。こういう投手もいる。まさに不思議だ。