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【里崎智也×ザック生馬特別対談】侍JAPANへの提言#3 日本は力で勝とうとしすぎている「韓国とも力勝負なら負ける」

WBCは4回目を迎え、対戦国との力は拮抗してきている。 事実、前回大会では大差をつけたオランダ代表とは11月の親善試合では2試合ともタイブレークにもつれている。また、アメリカはともかくとしても、各国がメジャーリーガーのメンバー入りが増えているのに対し、日本は前回0人だった。今回も、今のところ、アストロズの青木宣親のみで投手陣は不透明だ。 さらにいえば、侍JAPANは強豪国の一つとして知られているため、徹底マークされることも考えられる。他国と違い、親善試合や強化試合を重ねてきただけに、データもたくさん提供している。その中で戦っていくためには、かなりのハードルは上がっているとみていいはずだ。

2017/01/04

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他国は日本を細かく研究してきている

――この前の強化試合で、気になったのはメキシコ代表が日本を研究して、ポジショニングをあれこれとしてきました。上手く行ったかどうかはおいといて、すごく情報を持っているなと感じました。1試合目は負けたわけですから、あれが一発勝負なら敗退です。日本はそれほど研究されているのでしょうか。

ザック メキシコ代表は強化試合の前に情報を買いました。エドガー・ゴンザレス監督が、どの会社かわからないですけど、アメリカにあるデータサービス会社と日本の会社からも購入して、スプレーチャートなどを集めていた。それを参考にしてシフトをかけて、筒香嘉智選手の時でしたっけ? シフトを敷いていました。
 
――山田哲人選手、中田翔選手、筒香選手でしたね。

ザック 右打者でもシフトしていましたね。一方、アンドリュー・ジョーンズがベンチコーチをやっていたオランダは、逆にデータを使わないで、彼が日本野球を知ったノウハウでシフトをかけていた。なぜか、外野手をセンターよりにしていた。
 
――ところが、大失敗になっていましたね。坂本勇人選手のレフトフライがツーベースになっていました。

ザック ライン際ががら空きでしたからね。そのあたりが、僕は侍JAPANで気になったところです。データももちろん、スコアラーなど、スタッフは多いはずだから、日本は相手国を研究すると思いますが、日本人は『うちはどこよりも一番練習する』という風潮が野球に限らずあるじゃないですか。一番努力する国と思いすぎちゃって、相手が自分たちを研究してないと勘違いしてしまうことがある。
 
――実は、今の指摘は的を射ています。強化試合の最終日、監督インタビューで聞いたんです。メキシコのシフトなど、相手から研究されていることについてどう思いますかと。小久保監督は「日本も研究している」と応えました。相手が研究していることを感じていることを確認したかったんですけど、小久保監督の答えは「こっちも研究している」という言い方に終始したのは残念でした。

ザック それって答えになっていないです。
 
里崎 さらにいえば、自分たちもそんなに研究をしているというなら、それを強化試合で出せたかは分からなかったですよね。研究してきて何を出したの?出さないと意味がないわけじゃないですか。
 
ザック そのためのシフトですからね。成功したか、しなかったか。
 
里崎 最初に話した通り、強化試合ですから、失敗してもいいんですよ。アンドリュー・ジョーンズが真ん中に寄って裏目に出たのもいい。それを反省して、本チャンどうするかが重要になってくるわけですから。小久保監督は研究したといっても、何も試さないと宝の持ち腐れですからね。
 
ザック そこはちょっと心配ですよね。ウチは研究しているからって、研究されていることはどう思うんですか?っていうことだから、自分が研究しているってことだけで、研究されていることを覚えておかないと、ヒット性のあたりが全部、セカンドゴロとかになってしまうかもしれない。勘違いは要注意です。
 
里崎 力で勝とうとしすぎているというのは感じます。でも、力では絶対に勝てないです。韓国とも力勝負にいったら、負けますよ。韓国の選手は詰まっても、持っていくことができる。力負けしないから。日本にはそこまでのパワーはないと思います。
 
――日本は走塁の練習しているんですか。

里崎 やらないと思いますよ。「各自でやってきてください」って監督がいっています。22日でしたよね、集合。僕は遅いと思います。
 
――強化試合で気になるシーンがありました。二死二塁の場面で内野ゴロを打った。アウトになった時点で3アウトじゃないですか。その際に、二塁走者がどこにいたかをみていたんです。日本の選手は三塁ベースを回ったあたりでした。同じシチュエーションのオランダも見ていたら、彼らは全員ホームを駆け抜けていた。エラーがでたら、生還できる位置にいたんです。日本の走塁は、決して良くない。

里崎、結局ね、気を遣って誰も言わないんですよ。コーチが。日本の野球界は実績だけでしゃべるから、結果を出している人には言えない。ただ、指導しなくてもいいんですけど、方針は伝えないといけない。だから、そこも含めて(小久保野球が)みえないと指摘しているんですよ。気を遣うところではないじゃないですか。侍ジャパンは、こういう野球をして、こういうことをちゃんとやっていきましょうってルールが存在しないように見えるんです。

 

里崎智也(さとざき・ともや)
1976年5月20日徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮高)、帝京大学を経て、98年のドラフト会議で、千葉ロッテマリーンズを逆指名して、入団。03年に78試合ながら打率3割をマークし、レギュラー定着の足がかりをつくる。05年は橋本将との併用ながらも、日本一に貢献。06年にはWBC日本代表として世界一にも輝いた。持ち前の勝負強さで数々の名シーンを演出。00年代の千葉ロッテを牽引した“歌って、踊って、打ちまくる”エンターテイナーとして、ファンからも熱烈に支持された。14年限りで現役引退。現在はプロ野球解説者・評論家を務める傍ら、TV番組にも多数出演。

 
ザック生馬(ざっく・いくま)
1974年12月23日東京都生まれ、北米在住25年(トロント、ニューヨーク、フィラデルフィア)。ペンシルベニア大学学士号を習得。三桂事務所所属スポーツキャスター2016年スポナビライブ ニュースMC、実況(DeNA、中日&MLB戦)を務めた。過去には2015年UStreamドラゴンズライブTV、 2013-14年『FOX SPORTSジャパン』千葉ロッテマリーンズ リポーター 2007-13年日本テレビ「オードリーのNFL倶楽部」も担当した。

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