侍J、理想的な連勝。中国戦でトライすべきこととは?【小宮山悟の眼】
第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場している侍ジャパンは、第2ラウンド進出が決定した。同大会初戦のキューバ戦、2戦目のオーストラリア戦ともに勝利し、9日の試合で中国がオーストラリアに敗れたため、日本はプールB1位が決まったが、2次ラウンドでも勝ち進んでいくためには、相手がどういった戦法で来るか想定した戦いも必要ではないだろうか。
2017/03/10
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中国戦は結果より内容
大会前に2連勝で中国戦を迎えれば理想だと話したが、まさにその展開になっている。
中国戦は様々なパターンを試すいい機会にしたい。1位通過が濃厚になったからといって雑な攻撃をするのではなく、神経の行き届いた細かい野球を展開してもらいたい。
走者を出すのは当然のこととして、その走者をどういう形で先の塁に進めるか。戦術的なことでいうと、バントやエンドラン、単独スチールやスクイズなど、多くのトライができる。2次ラウンドに向けて、いまの侍Jがつなぎの野球ができることを証明する試合にしたい。
当然、この2試合を勝てたから、これから先の試合も打てるというわけではない。好投手との対戦となれば攻略が難しくなる。ここで雑な攻撃をしてしまうと落とし穴にはまるだろう。勢いに乗ることは大切だが、勢いだけだと好投手と当たった時に勝てなくなる。
どのような投手が相手でも、同じように得点ができる野球をした方が勝てる確率が上がるものだ。オーストラリア戦は苦戦するだろうという想定の中で、筒香・中田に勝負強さが生まれた。上手く行っているからこそ、締めないといけない。
また、中国戦ではこれまで登板機会のなかった投手がマウンドに立つことになる。
若い世代では武田翔太(ソフトバンク)、藤浪晋太郎(阪神)に出番があるだろう。彼らがどれだけ思い描いているボールを投げられるか。力を発揮すれば、そう打たれるはずはない。状況としては相当な余裕を持って投げられるのだが、見方を変えれば、ここで力が発揮できていないようなピッチングをみせると、今後の登板機会がなくなってしまう可能性がある。
つまり、見え方の問題が浮上してくる。この2試合は結果がすべてというゲームだったが、中国戦は「どんなピッチングをみせるか」の内容が問われることになる。2次ラウンドに向けて、彼らのパフォーマンスは大事になってくる。小久保監督が先発投手の起用を悩ませるくらいの好投を見せてもらいたいものだ。
2連勝を飾りいい形だが、大会はまだ始まったばかり。2戦が終わったに過ぎない。どのチームも勝とうと思ってきているわけだから、お互い研究は進んでいく。シビアな戦いになっていく中で、そこをどう乗り越えていくか。個人的には相手がどういう策に出てくるかを想定した戦いも必要だと思っている。横綱相撲でドンと構えるべきだという意見もあるが、それだけで勝てるような時代ではない。
本当の戦いは2次ラウンドに入ってからだ。そのためにも中国戦でどのような戦いができるか。テストを繰り返しながらも、締まりのある戦いを展開してもらいたい。
小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。