大変革は不要――。阪神・藤浪晋太郎が果たしていた“責任”と改善すべき“1つのポイント”【データで解く野球の真実】
昨季は7勝11敗と負け越し、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表に選出されながら登板機会にあまり恵まれなかった阪神・藤浪晋太郎。入団以来華々しいキャリアを歩み、成長を遂げてきた若きエースは今、“踊り場”に立っているようにも映る。だがデータ上では、昨シーズンの藤浪はこれまでと遜色ない成績を残していた。
2017/04/04
DELTA/Getty Images
立ち上がりに不安定さを見せる藤浪の「コマンド」
四球の増える立ち上がり時の藤浪に、具体的にどういったことが起こっているのだろうか。そこで、捕手がミットを構えた位置と、実際に投じられたボールがたどり着いた位置を比較して、制球、メジャーでいうところの“コマンド”を見てみた。
図は捕手の構えを中心に設定し、投じたボールがどれだけずれたかを表したものだ。同心円の一番内側の円(A)は「ほぼミットの幅の中に来た」ボールを意味する。真ん中の円(B)は「ミット1つ分のずれに収まった」ボール。捕手が低めいっぱいに構えたとき、「ストライクゾーンの真ん中、もしくは高めに来る」ようなずれを見せたボールを(C)、「ストライクゾーン高めから、それ以上高めに抜けていく」ようなずれを見せたボールを(D)とした。(A)が最も精度よく投げ込めたケース、(D)はその逆と考えてもらえればよい。
このデータには藤浪の課題が表れている。まず、ほぼ構えた位置にいくボール(A)への投球割合はNPB平均が14.6%であるのに対し10.5%と低い。構えから遠く離れた(D)への投球割合はNPB平均が31.0%であるのに対し40.0%と非常に高い。コマンドに定評があり、WBCでも低めのストライクゾーンにボールを集め続けて好投した巨人の菅野智之は、この(D)への投球割合を低く抑えており24.2%だった。そうした投手と比べたとき、藤浪が明確に“荒れ球”であるとわかる。
また、こういった特徴は初回に限定するとさらにはっきりしてくる。藤浪の初回の(D)に対する投球割合は44.3%。投球の半数を占めるストレートに限定すると47.0%に達する。約半数のボールが捕手の構えからかなり離れたところに投じられているのだ。これが初回に失点が増える要因のひとつになっていると思われる。
立ち上がりはどんな投手でも制球を乱すものなのかもしれないと考え、初回の投球のNPB平均を見たが、(D)へ投じる割合は30.5%、全投球平均の31.0%とほぼ変わらない数字だった。藤浪の立ち上がりは、やはり他の投手以上に不安定であるといっていいだろう。