スアレスを“発見”、デスパイネ獲得にも関与。ソフトバンク異色スカウトに聞く、輝く原石の見つけ方
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が終わってすぐ、プロ野球が開幕した。NPBの選手の中には、ベネズエラ代表に選出されたロベルト・スアレス投手やキューバ代表のアルフレド・デスパイネ外野手のように、WBCで国を背負って戦った助っ人選手が何人もいる。その前述した2人の発掘・獲得に関わった、中南米に拠点を置いて活動する福岡ソフトバンクホークスのスカウトマンに話を聞いてみた。
2017/04/06
政治不安でMLB球団はベネズエラのアカデミー運営から手を引いている
――他球団で注目する新助っ人選手はいますか。
「投手では巨人のカミネロ、DeNAのクライン、打者では中日のゲレーロ、ロッテのパラデスといったあたりが面白そうです。ただこればかりは始まってみないとわかりません。
先日も、ドミニカのウインターリーグで日本球界から戻って来たばかりのトニ・ブランコ(元中日、DeNA、オリックス)とバッタリ会いましたが、彼は『中日が我慢して使い続けてくれたから成功できた。他のチームだったらわからなかった』と言っていました。
球団通訳も務めた立場から言わせてもらうと、外国人選手の活躍にはプレー以外のサポートも非常に重要です。チーム事情もありますが、我慢して起用し続けることが大事だと思います」
「米国球界とのマネーゲームには勝てないこともあり、完成された選手はまず取れないと思っています」と語る萩原氏のもっぱらの関心は、メキシコで発掘したスアレス投手のような手垢のついていない逸材を見つけ出すことのようだ。
――ドミニカ、キューバでは、プロのゲームだけでなく少年野球にも目を光らせているということですが。
「ええ、地元の人から、あの町にすごい少年がいると言われれば、実際に行ってみます。ラテンの人たちは調子のいいことを言いますから、大体の場合、肩透かしをくらいます(笑)でも、まれに14、15歳くらいの逸材がいたりするんです。そうした子の成長を楽しみにしています。もちろん、大きな注目を集めると先にアメリカ球界の手が伸びてしまいますが」
――今年の活動予定や目標があれば教えてください。
「4月からはまたメキシコリーグ視察が中心となるでしょう。9月にはカナダでU18のワールドカップが開催されるので非常に楽しみにしています。あとは、人と同じことはしないというスタンスは大事にしたいです。
例えば、治安が悪いとかで、メキシコに行きたがらないアメリカ人スカウトなんかは結構います。また、政治上の問題もありますから米国人スカウトはキューバでは歓迎されません。そうしたところに自分のチャンスはあると思います。
政情不安でMLB球団がベネズエラでのアカデミー運営から手を引いていますが、だからこそベネズエラの逸材が発掘されないまま埋もれているかもしれません。そういう場所にも足を運んでみたいと思います」
ソフトバンクが他球団に先駆けて中南米に拠点を置いて活動するスカウトを置いて3年目。
スアレスの発掘、デスパイネの獲得など、萩原氏の活動もありソフトバンクの中南米ルートの強化に花が開きつつあるようだ。萩原氏はそうした自身の活動や立場について「とにかく自分は選手としての経験がないなかで、ソフトバンクがスカウトとして契約してくれたのですから、感謝しかありません。そして、私の活動が実を結ばなかったら、今後日本の球団が中南米スカウトというポストを置かなくなる可能性もあるわけですから、責任は重大だと思っています」と語ってくれた。
NPBのペナントレース開幕を横目に、萩原氏はすでに住まいを置くドミニカ共和国へと帰り、第2のスアレス発掘の旅の準備中だ。日本球界で唯一、ドミニカに拠点を置く日本人の中南米担当スカウトとしての萩原氏の仕事ぶりに今後も注目していきたい。