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【SB】首脳陣も高い期待値。甲斐拓也、育成からついに正捕手最有力候補へ

福岡ソフトバンクホークスの甲斐拓也捕手が着実に成長を遂げている。研究熱心で、昨季まではファームでもくもくと練習に励んでいた7年目の若鷹からは、自信をつけたからか、大きな存在に見え始めた。

2017/05/20

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「ヒトはヒト」

 5月2日の埼玉西武ライオンズ戦、中村剛也に2ランを打たれた。その後、2点を追う2回の攻撃でヤフオクドームが異様な空気に包まれた。
 
 その意外性からだろうか。スタンドから一瞬「え?」という声が聞こえてきそうな間の直後、大歓声に包まれながら甲斐はダイヤモンドを一周した。プロ初ホームランは逆転満塁弾となった。
 
 指揮官は「みんなビックリしたと思うよ。粘って何とかしようという思いが出たホームランだったね」と振り返る。
 
 初めてのお立ち台では緊張したと苦笑い。「素直に嬉しかったです。(中村に2ランを)打たれたのは僕の責任。何とかその分を取り返したかった。打てる打者じゃないので、死球でも何でも出塁して次につなげられればいい。1打席1打席、自分のやるべきことをやるだけ」と、すでに次の試合に気持ちを切り替えようとしていた。責任感の強い真面目な男なのだ。
 
 昨季の今頃は別の立場にあった。
 
 開幕1軍を手にしたのは甲斐ではなく同期入団の斐紹。ファームで黙々と練習に励んでいた姿を思い出す。そのときは「もちろん悔しいですけど、自分がやるべきことをやるしかない」と話していた。甲斐の帽子のツバには「ヒトはヒト」と書かれている。周りを気にし過ぎて、自身のやるべきことを見失ってはいけない。
 
 真面目に練習に取り組む姿を見守ってきた水上善雄2軍監督は「緊張した表情でマスクを被っている姿を見るのは嬉しいです」と目を細める。また、的山哲也2軍バッテリーコーチも「嬉しいですよ。1軍で試合に出られているので、いいことも悪いことも経験してほしい」とさらなる成長に期待を寄せる。
 
 甲斐にとって今季がキャリアハイになることは間違いない。しかし、それは長い目で見れば通過点にすぎない。マスクを被る姿が実際の身長よりも大きく感じるのは、少しだけ自信をつけ逞しさを増したからだろう。
 
 正捕手不在が続いた数年の悩みの種が解決されるのは、そう遠くはなさそうだ。

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