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【侍J稲葉采配を読み解く】“完璧な継投”がもたらしたタイブレークでの勝利。指揮官が踏襲した成功例とは

「ENEOSアジアプロ野球チャンピオンシップ2017」が16日、東京ドームで開幕した。稲葉篤紀監督率いる新生・日本代表「侍ジャパン」は、初戦の韓国にサヨナラ勝ち。稲葉監督は初陣でどんな采配を取ったのか。

2017/11/17

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「想定内」でベテラン指揮官の風格

 今年のWBC 第1次ラウンドのオーストラリア戦では、先発の菅野智之(巨人)が打ち込まれて球数が規定に達すると、その後を岡田俊哉(中日)が3分の2イニングを抑えてピンチをしのいだ。次のイニングからは千賀滉大(ソフトバンク)が2回をぴしゃりと抑えた。
 
 また第2次ラウンドのオランダ戦は、先発・石川歩(ロッテ)が3回で5失点を喫すると、4回からチームではクローザーの平野佳寿(オリックス)が1イニングで流れを止め、千賀に繋いだ。ブルペン陣に豊富なスペシャリストがいる日本の新しい戦い方だった。
 
 WBCでは球数制限というルールがあっての戦い方だったが、稲葉監督はその成功例をうまくこの韓国戦で踏襲したというわけだ。
 
 大会前から「継投がポイント」と語っていた稲葉監督は初戦をこう振り返った。
 
「韓国にはいい左バッターが多いという中で、序盤は薮田投手が抑えてくれましたが、そこがダメでも近藤投手を投入しようと考えていました。近藤投手が左バッターでも三振が取れるので、ピンチになれば近藤投手を投入して6、7回、8回あたりに左投手の野田、堀をと考えていました。ただ、今日は意外と早くに薮田投手を交代させましたが、いろんなことを想定していました」
 
 近藤は1失点したとはいえ、桑原のまずい守備もあり、打球自体は打ち取っていたものだった。そこで3点差にとどめて、流れを切ったのは見事といえるだろう。
 
 山川の本塁打で1点差となったあとも、細かい継投が光った。
 
 8回表は、2イニング目の石崎剛(阪神)が走者をためると、2死一二塁で野田昇吾(西武)を投入。見事な火消し役を果たした。延長10回タイブレークの3失点のあとも、左打者が並ぶところで、堀瑞樹を登板させ、その後の逆転劇につなげた。
 
 打撃陣はうまくつながらなかったが、その奮起を待つために投手陣を巧みにマネジメントして流れを作ることに成功できていたことが、韓国戦の勝因の一つだろう。
 
「(采配をする)最初からタイブレークを経験させていただいたのは貴重ですけど、延長になった時点で、同点になったら次のイニングはどういう投手起用をするのかを考えながらやっていました。想定内のことばかりで、自分の中でいっぱいいっぱいになることはなかったです」
 
 稲葉監督に初々しさはなく、まるでベテラン監督のように振り返っていたのが印象的だった。台湾戦はいかなる采配を見せてくれるのかが楽しみだ。

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