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侍ジャパンのあるべき姿とは。求む「香川真司の姿勢」。サッカーに倣うべき日の丸の重み【小宮山悟の眼】

「ENEOSアジアプロ野球チャンピオンシップ2017」が開幕した。日本は初戦で韓国にタイブレークの末にサヨナラ勝ちするなど、順調な戦いぶりを見せている。今大会から指揮を執る稲葉篤紀新監督は上々の滑り出しと言える。2020年の東京五輪の金メダルを目指しているという稲葉ジャパン。今回は今後の侍ジャパンがどういう存在になっていくべきかについて話したいと思う。

2017/11/18

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サッカーに倣うべき代表選手へのこだわり

 今回のアジアプロ野球チャンピオンシップは年齢制限があり、「試し」のような感覚がある大会という印象は否めない。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)やプレミア12などに比べると、モチベーションに違いが出てきてしまうかもしれない。
 
 誰がどうとか言うわけではなく、侍ジャパン全体の経験が浅い。失礼を承知で言うが、今大会は負けたところで、そこまでたたかれるわけでない。
 
 「シーズン後に侍ジャパンという重要な大会がある。シーズンが終わっても日の丸を背負って頑張らないといけない」という考えが定着すれば、モチベーションが下がったり、シーズン中に疲労が見えたりする選手は減ってくるはずだ。
 
 その中で、今大会は横浜DeNAベイスターズの山崎康晃が韓国戦で見せたパフォーマンスは、代表に選ばれたモチベーションの高さを示していた。気持ちが前に出るようなピッチングをしてくれていた。「代表はこうあるべき」「日の丸を背負うのは重たいものだ」ということを見せてくれた。
 
 代表チームにおける気持ちの持ち方の違いは、サッカーから倣うべきところがあるかもしれない。
 
 サッカー選手は、日本代表に選出された、あるいは落選したということだけで、物議を醸す。古くはW杯フランス大会直前に三浦知良が落選した事件から始まって、最近はテストマッチなのにベテラン3人が外れただけで大騒ぎになった。
 
 その3人は三者三様のリアクションだった。その中でも背番号10を背負う香川真司がへそを曲げていた。それぞれの選手は所属クラブがあるにも関わらず、代表への思い入れが大きい。このような感覚が定着しているからこそ、サッカーは親善試合でも客席は満席になるのだ。
 
 今大会の制限を付けた代表チームの認知度がどれほどのものか分からない。
 
 ただ、選手が日の丸を背負う重要性を理解し、この代表選出が2020年の東京五輪につながっていくという強い意識を持てば、もっと目の色は変わっていくと思う。2020年の東京五輪、その次のWBCを見据えている部分もあるだろう。マイクを向けられた選手は「東京五輪に出たい」というコメントを出すくらいになってほしい。
 
 今大会の代表だけではなく、選ばれていない選手からもその発言が出てくるのが理想的だ。50年後や100年後、野球日本代表チームに入ることが何よりの最終目標だという存在にするということが今後の課題だろう。
 
 招集されて当たり前という選手がたくさん生まれる。そうなると、呼ばれなかったときに物議を醸す。怒る選手が出てくる。サッカーではないが、そういう図式になると競争が激しくなって代表の重みも出てくるはずだ。
 
 
小宮山悟(こみやま・さとる)
 
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。

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