”男気”黒田が見せた「気概」
黒田博樹が、藤浪に対して詰め寄った行為が話題になった。これに対して、プロ野球OBからも賛否両論の声が上がる。黒田の「怒気」はもちろん藤浪に対して示したものだが、その「気概」は、ふがいないチームに対する喝でもあったのではないだろうか。
2015/04/27
衣笠の時代とは違う
「大人気ない」と批判する向きには、カープの大先輩である衣笠祥雄の対応を想起していたものもいたことだろう。
彼はビンボールまがいの投球をされてひっくり返っても、何事もなかったかのようにユニフォームの泥を払ってボックスに入っていたし、骨折にいたるような強烈なデッドボールをくらっても平然と一塁に向かった。
投手がキャップをとって詫びようものなら、「いいから、いいから気にするな」と手で制していたものだった。
まさに「大人らしい」対応。
しかし、そんなリアクションは彼の人間性と経験からきたもので、誰もが真似のできることではない。
また、彼がそうできた当時のカープのチーム事情も考慮すべきだろう。
衣笠祥雄の時代のカープは、四半世紀の低迷を脱却して初優勝。それからも古葉竹識、阿南準郎両監督のもとに常勝軍団と讃えられた黄金時代にあった。
黒田のようにチームを鼓舞しなくても、チーム個々の選手が高い意識を持って戦っていた時代だ。
「ひとつのランナーを苦もなく手にしただけ」という共通認識が衣笠にもチームにもあった。
いまカープは、けっしていい状態ではない。
開幕前の「優勝候補」から一転、最下位にあえいでいる。
そんなチームに喝を入れるため、黒田は激高した気持ちをあらわにした。
ここでへらへらして、何事もなかったように打席にもどったのでは相手にナメられる。
「ここは行くしかない」という“消極的な選択”だったのだろう。