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「早めの一軍が成長の糧に」日本ハム・高梨裕稔の先発起用が意味するもの

5月3日の千葉ロッテ戦で、同一カード3連勝をかけた北海道日本ハムは足の不安のため登板を回避したエース・大谷に代えて、2年目の高梨裕稔を先発に送った。これで2013年にドラフト入団した8名全員が一軍を経験したことになる。

2015/05/06

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いい選手は失敗を糧に、ひと回り大きくなる

 かつて、中日の山本昌にデビュー戦での思い出について尋ねたことがある。1986年10月16日、神宮球場での対ヤクルト26回戦。プロ入り3年目の左腕は1-5とリードされた6回にマウンドに上がり、広沢克己に2ランホームランを叩き込まれた。

「初めて一軍に出て驚いたのは、キャッチャーの構えるミットがとにかく小さく見えたってこと。学生時代や二軍の試合はデーゲームばかり。ナイターに慣れていなかったんだ」

 これもまた一軍にデビューしなければ、わからないことだ。

 同じ野球でも、一軍と二軍は似て非なるものだ。結果を求められる一軍のプレッシャーは、鍛錬の場である二軍の試合とは比較にならない。その一軍のマウンドに高梨は立った。満員のスタンドの熱気、相対する打者が醸し出す威圧感は、いままで経験したことのないものだったはずだ。

 2年目の春に巡ってきたチャンス、高梨は実力をほとんど出し切れないままマウンドを降りた。ストライクを取ることに四苦八苦し、打者と駆け引きをする以前に自分との戦いで負けてしまった。これはおそらく、一軍のマウンドに立たなければ経験できないことだったはずだ。
 一軍で結果を出すためには……。
 いまごろ高梨は、いままでよりも高い次元の悩みに直面しているだろう。それが明日の成長の糧になるのだ。

 近い将来、高梨がふたたび一軍で出番を得て、今度はしっかりと結果を出したとする。それは初登板の失敗が生きたということになる。

 早く一軍で通用する選手を育てようと思ったら、早めにチャンスを与えるのがいい。それがたとえ失敗に終わったとしても、いい選手は失敗を糧にして、またひと回り大きくなるもの。それが限られた人材を最大限に生かそうとする日本ハムの哲学。2015年組も、やがて次々と出てくることだろう。

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