野村克也氏、ソフトバンク・工藤監督の采配に疑問「監督は試合中に喜怒哀楽を出すものではない」<再掲載>
野村克也氏が11日、虚血性心不全により84歳で死去した。現役時代は戦後初の三冠王(1965年)に輝き、引退後はヤクルトを3度の日本一に導いた名将。現代の野球観にも多大な影響を与えた唯一無二の存在だった。 また指導者としても、数多くの名選手を育て上げてきた手腕は、今なお求める声が大きい。“ノムさん”が日本野球の行く末を憂い生前に残した言葉には、未来につながる気づきが詰まっている。「未来のプロ野球選手を夢見る選手を教える指導者はどのような知識を備えるべきか、そしてどのような指導をすべきか」。2019年4月17日に同氏の著書「指導者のエゴが才能をダメにする ノムラの指導論」から一部抜粋で公開したインタビューを再掲載する。
2020/02/12
監督は感情を表に出さないほうがいい
そしてもう1つの原因は工藤にある。彼はベンチ内での喜怒哀楽が激しい。チーム内の誰かがホームランを打ったり、勝利が決まった瞬間は大喜びで選手を出迎える一方、自軍の投手が打たれたり、あるいは負けが決まると、とたんに険しい顔つきになる。こうなると選手も知らず知らずのうちにベンチ内を見て野球をすることになるし、ときにはプレッシャーに感じることだってある。
監督は感情を表に出さないほうがいい。それだけは間違いない。選手と一緒になって喜んだりはしゃいだりすることは、監督には必要ではない。たとえ試合の終盤になって味方の選手がホームランを打って逆転しても、次のイニングはどんな投手起用をすべきか頭を悩ませるからだ。
監督がベンチ内で笑顔を浮かべてしまうと、「ああ、良かった」という安心感が監督の心のうちに自然と生まれてしまう。それが選手にも伝染していくのだ。
半年にも及ぶ長丁場のペナントレースは、監督の采配を必要としないくらい、好調な時期というのは、わずかでしかない。それよりも監督が知恵を絞り、チームの状態に応じて選手起用や作戦を練らなければならない。
けれども工藤の采配は「とにかく動く」。それで墓穴を掘ることが多い。とくに彼は投手出身であるにもかかわらず、投手を信用していないのか、コロコロ、コロコロよく代える。そのことによって投手陣が疲弊してしまったことは大いに考えられる。