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ベイスターズと横浜スタジアムを“声”で盛り上げるウグイス嬢

球場内でアナウンスを担当する“ウグイス嬢”もチームを支える裏方の一人だ。今回は横浜DeNAベイスターズの江川広美さんにウグイス嬢の仕事について話を伺った。

2019/06/24

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小さいころから憧れだった職業

 風に乗り軽やかに響きわたるその“声”は、各球場にとって個性であり、いわば“顔”である。昨今、球場における演出はトレンドを追った趣向を凝らしたものに変貌を遂げているが、昭和の時代から変わらないのが戦いの世界に華やかさを生む“ウグイス嬢”の存在だ。
 
「アナウンスを始めたばかりの当時と比べると、より多くのお客様が足を運んでくださるようになり、そのような恵まれた環境で仕事ができていることを、本当にありがたく感じています」
 
 こう感慨深く話してくれたのは、横浜DeNAベイスターズの江川広美さんだ。ウグイス嬢として、2002年シーズンから長年にわたり横浜スタジアムでの場内アナウンスを務めているが、江川さんの美声は球場に足を運んでいるファンならばピンとくる人も多いだろう。聞き取りやすく、なめらかで艶のあるその声は、港町の名物だ。
 
 1998年の日本一以後の低迷期を知る江川さんにとってみれば、「満員の球場で仕事ができるのは、選手のみならず球団を支える裏方の人間にとっても幸せなことです」。
 
 そんな江川さんがプロ野球に興味をもったのは小学校高学年のときだ。
 
「テレビ中継を見ていて自然とウグイス嬢の方の声が耳に入ってきて、こういうお仕事があるんだと知り、自分もやってみたいなって」
 
 横浜出身の江川さんは中学生のころ横浜スタジアムに観戦に来る機会が多く、当時のウグイス嬢に憧れを抱いたという。その後、社会人となりデパートの館内アナウンスの仕事をしていたが、あるとき球団がウグイス嬢を公募していることを知り、これはと思い応募し、夢だった今の職を得るに至った。「うれしかったですね。けど運が良かっただけです」と、江川さんは控え目に微笑んだ。
 
 現在、江川さんは球団のエンタテインメント部に籍を置き、スタジアムの場内アナウンスばかりでなく他の業務もこなし忙しい日々を過ごしている。
 
「一軍の試合以外にファームの主催試合をもう一人いる球団職員とローテーションを組んでアナウンス業務を行っています。スケジュールが不規則になりがちなので、体調面にはかなり気を使っていますね。喉を傷めないためにタオルを首に巻いて睡眠をとったり、アナウンスをするときも飴やお茶で喉を潤し乾燥を防いだり。
 また、所属するエンタテインメント部はイベントを企画運営する部署でもあるので、例えばイニング間のイベント『夢に向かってJUMP!!山﨑康晃グローププレゼント』では山﨑選手のグローブプレゼントや、『PONOS presents BAYSTARS SUPER BAZOOKA』というバズーカを使ったイベントの準備など、滞りなく演出できるような環境作りをしています」
 
 一見華やかそうに見える仕事だが、実際はイベントの裏方業務に加え、その日に話す原稿の準備などやることは多岐にわたる。ナイターの日はお昼ぐらいに横浜スタジアムへ出勤すると、準備やミーティングなどで瞬く間に試合開始の時間を迎えてしまうという。
 
 現在の一軍では、スタジアムDJがDeNAの選手をコールし、江川さんらウグイス嬢はビジターの選手コールを担当するスタイルだが、ファームでは一人でアナウンスを行っている。選手をコールする際、江川さんならではのテクニックなどはあるのだろうか。
 
「まず数年前から試合のスピードアップ化が進んでいるので、以前は第一打席で2回コールしていたのを1回だけにするようになりました。あと選手それぞれに出囃子があるので、曲のタイミングを見計らってコールをしたり、あるいは代打のときは間をおいて観客の皆さんが盛り上がれるように考えながらやっています」
 
 微細な空気を読み、絶妙な“間”を活かす。これぞプロのテクニックである。
 
 さらに、観戦に来たファンのために「ひと試合、シーズンを通じて安定したアナウンスをすること」を大切にしており、コンディションと準備を整えて試合に臨むことを常に心掛けている。

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