本当の課題は守備にあり? 高津臣吾新監督のもと投手再建を目指すヤクルト、世代交代に注目【データで解く野球の真実】
ヤクルトは昨季59勝82敗で最下位に低迷。新シーズンは高津臣吾新監督のもと迎えることになった。アメリカのほか韓国球界でもプレーするなど、経験豊富な高津監督のもと、投手陣を再建し失点を減らしたいという球団の思惑が見える。だが、どうやらヤクルトの問題は投手陣だけではないようである。
2020/01/27
ヤクルトが中日に比べ増やしたヒットは146本?
ただ失点の要因となるのは投手だけではない。野手の守備のまずさで失点が増えるということもあるだろう。野球におけるディフェンスは主に「投球」と「野手の守備」に分けて考えることができる。ここではデータでこの2つを区分し、問題の把握を試みたい。
イラストは2014年以降の各年度におけるセ・リーグ球団の「投球」と「野手の守備」の成績を散布図にしたものだ。横軸に示しているのはFIP(Fielding Independent Pitching minus)という投球指標だ。FIPとは投手が記録した奪三振・与四球・被本塁打の数字を使って算出する防御率のような指標である。守備力や運の影響を排除しているため、防御率よりも純粋な投球の質を量ることができると考えられている。
グラフに示したFIPは各年度のリーグ平均を100とし、それに比べどれだけ優れていたかを表している。90であれば、リーグ平均の90%ほどに失点を抑えることができる投手陣と考えることができる。
グラフ内に赤く示したのが2019年のヤクルトだ。リーグ平均FIPを100とした場合ヤクルトは108。セ・リーグの平均に比べ8%ほど失点を増やしてしまう投手陣だったと考えることができる。やはり昨季のヤクルトは投手力で劣っていたようだ。
次に野手の守備力を示す縦軸を見ていこう。縦軸はフィールド上に飛んだ打球(邪飛含む)がどれだけの割合でアウトにできたかを表すDER(Defensive Efficiency Ratio)だ。こちらもFIPと同じように各年度の平均を100として相対化した。高くなるほどに多くのアウトをとることができている優れた守備陣と考えることができる。
この平均と比較したDERで、2019年のヤクルトは97。セ・リーグ平均の97%ほどしか打球をアウトにできていなかったことになる。散布図内で最も下に位置しているため、過去6年間のセ・リーグ延べ36球団で最も野手の守備が悪かったチームだったようだ。
ちなみに昨季の中日はフィールド上に飛んだ打球を71.7%の割合でアウトにしていたようだ。これはセ・リーグトップの値である。一方のヤクルトは67.1%。3.8%の差がついている。この差をヤクルトの昨季のフィールド上に飛んだ打球3853に掛けると146。昨季のヤクルトは中日が守っていた場合に比べ、シーズン全体で146本のヒットを増やしていたと推定することができる。おおよそ1試合に1本と考えると、守備でつく差のインパクトの大きさが理解できるだろう。ヤクルトが失点を減らすためには投手力と同じか、それ以上に守備力の改善が必要と考えられる。