川相昌弘、ドラフト4位の肖像#5――「びっくりしましたね。まさかの巨人だって」
ドラフト四位指名―ドラヨンに結果を残している選手が多い。ドラフト一位指名は、その時点で同年代の野球少年の最前列にいると認められたことになる。その意味で、ドラヨンは、二列目以降の男たちとも言える。そんな“ドラヨン”で入団した野球選手を追った10/16発売の新刊「ドラヨン」から一部抜粋で公開する。
2019/10/18
田崎健太
10年ぶりの“東南決戦”
初戦、岡山南は倉敷工業を横谷の満塁本塁打などで一二対〇という大差をつけて五回コールド勝ち。続く津山工業戦は延長一○回で一対〇の辛勝。そして準々決勝で岡山東商業と対戦した。岡山東商業はかつて、川相が進学を検討した高校である。この試合が県大会の一つの山だった。
岡山東商と岡山南が県大会で対戦するのは一○年ぶりのことだった。〝東南決戦〞を見るために多くの観客が詰めかけた。川相は観客席がいつもと違う「ちょっと異様な雰囲気だった」と振り返る。
先手をとったのは岡山南だった。三回に二点、四回には川相の中堅への打球がランニングホームランとなり三対〇となった。
この日、岡山東商は強打の岡山南対策として、外野手を深めに守らせていた。これが当たり、五回にフェンス間際の打球を左翼手がグラブに収めている。六回に一点を返した後、七回一死一、二塁の場面で岡山南の二番打者の打球が右中間に飛んだ。通常の守備位置ならば長打となる、はずだった。しかし、この打球を中堅手が飛びついて好捕し、追加点を許さなかった。
岡山東商はこの好守でぎりぎりで踏みとどまった。その裏、川相が突如崩れる。