「残像を活用した」投球術で他国を圧倒。侍ジャパンを頂点に導いた“最新型”の方程式【プレミア12】
2019/11/18
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ブルペン充実で「継投に踏み込みやすかった」
まさか、初回の3失点だけで終わるとは、誰も想像しなかったのではないか。
「世界野球プレミア12」決勝戦は、侍ジャパンが5−3で韓国を下して大会初優勝を遂げた。
1回に先発の山口俊(巨人)が2つの本塁打を浴びるなど3失点のスタート。苦しい試合になると思ったところ、2回に逆転してからはブルペン陣の危なげないピッチングで逃げ切っての勝利だった。
チームを勝利に導いたのは紛れもなく投手陣だ。
試合は、侍ジャパンの先発・山口の乱調から始まった。先頭打者を四球で歩かせると、2番打者に先制の2点本塁打を浴びた。2死を取ってからもソロ本塁打を食らうなど、ボールが先行し、制球が定まらずに的を絞られての手痛い2発だった。
稲葉篤紀監督はそんな不調の山口を1イニングのみで交代させた。
改善の見込みがないと踏んだのだ。
稲葉監督は言う。
「山口は球が浮いていましたし、相手のバッターも嫌がる素振りをしていなかった。苦渋の決断だったんですけど、後ろにも投手がいましたので代えました」
これが功を奏する。
2番手の高橋礼(ソフトバンク)が2回表をピシャリと抑えると、その裏、2死一、二塁と好機を掴むと、これまで不調だった山田哲人(ヤクルト)が左翼へ特大の3点本塁打のアーチをかけて逆転に成功したのだった。
ここからは侍ジャパン投手陣のクオリティだけがただただ目立った。
高橋が2イニングを抑えると、3番手の田口麗斗(巨人)は走者を出しながらも2イニングを零封して6回から小刻みな継投に入った。中川皓太(巨人)、甲斐野央(ソフトバンク)、山本由伸(オリックス)、山崎康晃(DeNA)と1イニングずつを投げて許した走者は6回、守備のミスによる一人だけだった。
山口の乱調から高橋が止め、田口が流れを作って勝利を収めていく。侍ジャパン投手陣の独壇場と言えた。
「今大会を通して先発投手を早々に交代させることができたのは、後ろが決まっているからというのがありました。彼らの存在があったから継投に踏み込みやすかった」
そう語っていたのは建山義紀ピッチングコーチだ。
この日でいうと、高橋の投入が試合全体の流れを変えたが、山口の乱調から稲葉監督がすぐに決断できた背景には、ブルペン陣の充実があったからこそだった。