「残像を活用した」投球術で他国を圧倒。侍ジャパンを頂点に導いた“最新型”の方程式【プレミア12】
2019/11/18
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国際大会で通用する投手の特徴
改めて、今大会で後ろ3イニングを務めた、甲斐野、山本、山崎の3人は圧巻だった。ほとんど付け入る隙を与えずに抑えきる質の高いピッチングを見せた。
彼らの投球を見ていると、やはり、国際大会で抑えることができる投手の特徴を感じたとともに現代野球に必要なピッチングスタイルを再確認した。
強いストレートと落ちるボール。
これは特に国際大会で通用すると言われてきた。
甲斐野は最速158キロとフォーク。山本は最速156キロとフォーク、山崎は150キロ超のストレートとツーシーム、というようにだ。
今大会は控え捕手としてチームを支えた小林誠司(巨人)が、昨今の投手の特徴をこう語っている。
「ここ最近の投手は動くボールを投げるケースが多いです。ピッチトンネルという考え方が浸透してきて、前に投げた球の軌道を生かそうという投球、残像を活用した投球は増えてきたと思う」
かつて、打者を封じる投球術として速いストレートと落差のある変化球を駆使する緩急を求められたことが多かったが、ここ数年は変わりつつある。ストレートとフォークやカットボール、最近の流行で言えば、「スラッター」なる球種が誕生して、打者を牛耳っていくのだ。
セットアッパーの山本はその意識を常に持っている投手だ。
「特に、いいバッターは軌道からずれると全然、振ってくれないというのはいつも感じています。フォークを投げる時は、ストレートの軌道に乗っかかるようにするというイメージは常に持っています。いいバッターになればなるほど、小さなブレを見逃さないので、大切しています」
速いまっすぐとそれに似た軌道で打者を圧倒していく。
完璧だった侍の投手陣はそうした術まで持ち合わせていたわけである。
これだけ最新型の投手陣をリリーフに3人も備えているというは大きな武器だろう。
胴上げ投手に輝いた山崎はピッチング同様に締めてくれた。
「落ちる系のボールは外国人には有効になるのは共通認識として持っていました。緩急というよりはスピードボールと球の強さが大事になるというのは、ブルペンにいても、投げていても感じました。落ちるボールをみんな持っていて有効活用できていたかなと思います。
もちろん、相手によって異なるところもあります。韓国は日本に近い、しかし、アメリカは打球を上げてきますから、落ちる系を投げ切る部分とインコースの高いボールを投げ切ることで幅を使わないといけないのはあります。4年前は悔しい思いをしていたので、このユニホームを着て戦って、また成長させてもらいました」