今、三冠王に一番近いのはこの選手だ!データから読み解く大記録の可能性【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。第24回目は、「三冠王」についてだ。
2014/12/05
三冠王の獲得にはチームメイトのバックアップが必要だ
三冠王の記録を調べていくと、興味深いことがわかる。
三冠王は、一人では獲得できない、ということだ。
チームでただ一人突出した強打者は敬遠されやすい。投手はその打者だけを注意すればよいから攻めやすい。その上、その打者の前に出塁率の高い選手がいないと打点が稼げない。
三冠王の前後には強打者が取り巻いているケースが多いのだ。
NPBの歴代三冠王とその前後の打者の成績を並べてみる。
初代三冠王中島治康の前には、当時まだ19歳だった千葉茂が座った。打率は低かったがリーグ最多の43四球。そして5番には18歳だった川上哲治が座り、勝負強い打撃を発揮し始めていた。
野村克也の前後にも広瀬、ケント・ハドリという強打者がいた。
そして王貞治の時は、ONコンビの長嶋茂雄とV9戦士の末次(74年に改名)がいた。
以下の例を見ても、三冠王は「孤峰」ではなく「山脈」の中央に位置しているのだ。
MLBでも同様で、一昨年、45年ぶりに三冠王になったタイガースのミゲル・カブレラ(3番)の後にはプリンス・フィルダーがいた。投手はフィルダーがいるのでカブレラを歩かせるわけにいかず、勝負することを強いられたのだ。
対照的にNPBで昨年60本塁打を打ったウラディミール・バレンティンのまわりには規定打席に達した選手が一人もおらず、打線は固定できなかった。そのために103回も歩かされることとなり、打点、打率のタイトルには届かなかった。
三冠王になるためには強力な打線という〝バックアップ〟が必要なのだ。