国吉は防御率5.16でも好成績? ロッテ-DeNA間で起こった有吉優樹-国吉佑樹のトレードをデータで分析する
2021/06/16
防御率5.16でも、データ分析の視点では悪くなかった国吉
最後にロッテに移籍することになった国吉についても触れておきたい。今季国吉はここまで18試合29.2イニングを投げ、防御率が5.16。昨季の防御率が3.13だったため、普通に考えれば大きく成績を落としている、あるいは不調と考えてしまう。しかし前述したように、投手が失点するかどうかは野手の守備力や運による影響も大きい。投手の能力が大きく反映される指標で見た場合、どのように評価できるだろうか。さきほどと同様にK-BB%で比較してみよう。
国吉佑樹の年度別K-BB%
年度 投球回 防御率 K-BB%
2018 16.2 4.86 8.0
2019 69.1 4.80 17.7
2020 46 3.13 15.2
2021 29.2 5.16 19.2
※2021年のデータは6月14日終了時点
K-BB%の平均は10%程度。昨季の国吉はその平均を大きく上回る15.2%を記録している。昨季は防御率も良かったが、野手の守備力や運を除いた部分でも優れた投球をみせていたようだ。今季はどうだろうか。防御率の悪化に伴い値が低下しているのかと思いきや、K-BB%は19.2%。投手の責任が大きい部分のみに注目した場合、なんと昨季以上の好成績を残しているのだ。
ではなぜここまで今季の失点が増えているのか。最大の要因は出した走者の多くが本塁に還ってきてしまっていることにある。昨季の国吉は出した走者の80%を残塁させることに成功していた。しかし今季はその値がわずか54.6%。出した走者の半分近くが本塁に還ってきているのだ。
こう聞くと、単純に今季の国吉が塁を出した状況で良い投球ができていないのではないかと考えるかもしれない。しかしデータ分析の世界では、この割合の高低は投手の能力よりも運の影響が大きいとされている。多くのイニングを投げると、多くの投手が70-80%ほどに落ち着くようだ。また実際、国吉の走者あり時K-BB%は昨季より今季のほうが優れた値を残している。つまり今季の国吉は極めて運が悪い状態にあるというわけだ。
このように、今季の国吉は悪い投球を見せているわけではない。DeNAが今季の国吉をどのように評価していたかは外側からはわからないが、ロッテからすると過小評価されている投手を低リスクで獲得できたともいえるかもしれない。ただ国吉はあくまで短いイニングを担当する救援投手だ。短いイニングゆえに、シーズンレベルでチームの失点を大きく減らすのは難しいだろう。有吉が一軍で多くのイニングを担当できた場合、DeNA側のメリットが上回る可能性も十分にある。
(※3)データはすべて6月14日終了時点
DELTA(@Deltagraphs)http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。