「野球人生が変わりました」。高橋光成を変えた前橋育英・荒井監督の存在
2013年、夏の甲子園で彗星のごとく表れ、前橋育英の初優勝に大きく貢献した高橋光成。その後は疲労やケガに泣き、登板できない日々が続いた。ケガも完治し、2014年ドラフトの注目株が、この1年を振り返った。『ベースボールサミット第3回 やっぱり甲子園は面白い』(http://jr-soccer-shop.jp/products/detail.php?product_id=1062)P.214-P.220より引用
2014/10/18
「育英で、野球人生が変わりました」
悩めるエースを救ったのは荒井監督だった。
マウンドでの投球練習時にはいつも傍らで見守り、気づいたことがあれば、短く言葉をかける。
「監督さんから言われることは三つだけ。しっかり立って、体重移動して、肩を入れ替えろ、と。細かいことは言われない分、すごく、心に響くんです」
それはピッチングに限ったことだけではない。前橋育英では、練習が始まる前に集合し、監督が一声かける。その日の練習で意識すべきこと、監督が感銘を受けた言葉。毎日話の内容は様々だというが、夏の予選が近づいてきた6月、荒井監督の発した言葉が、高橋の胸に響いた。
「『昨日の自分を超えろ』と言われたんです。自分の中でも、目標があるけど、でもその目標をいつ達成できるんだろうという焦りとか、不安があって。だけど監督さんが言うように、昨日の自分を超えたら、それは目標に近づいている、ということなんじゃないかなって。スカウトの前でいいピッチングをしなきゃとか、応援してくれる人たちの期待に応えなきゃ、とかいろいろ考えすぎてしまっていたけれど、もっと単純に、昨日の自分を超えることを意識したら、毎日が目標になるんだ、と。だからその言葉は、すごく自分の心に響きました」
甲子園に出場し、優勝して多くの選手やチームを知り、去年の自分と比べたら、視野も世界も間違いなく広がった。
そんな今だからこそ、強く感じることがある。
「(前橋)育英でよかったなって思います。もしもここで野球をやっていなかったら今の自分はいないし、あんないい結果も、ついてこなかったと思います」
野球でエラーをしても、チャンスで凡退しても決して監督から怒られることはない。だがその分、日常生活には厳しく、挨拶や掃除、やるべきことが守らなければ叱られるが、次の瞬間には何事もなかったように、いいものはいい、と褒めてくれる。
荒井監督の指導法やスタンスは、高校野球の世界に多く存在する、カリスマとは程遠い。だが、だからこそ得られる選手との信頼関係があると高橋は言う。
「スキがないんです。取り組み方も、考え方も全部がすごい。なんかそう言うと上から目線みたいで嫌ですけど(笑)。いつも第一に選手のこと、チームのことを考えていてくれるから余計なプレッシャーをかけることもしない。監督さんの影響が、自分にはものすごく強いし、監督さんの野球でよかった。育英で、監督さんのもとで野球ができて、自分の野球人生が変わりました」
【続】「3年生の進路を背負って投げろ」。前橋育英・高橋光成をエースにした言葉
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