「キャッチャーの醍醐味が日本プロ野球に」ケビン安藤が巨人、広島の入団テストを受ける理由
アメリカで生まれ育った18歳の若き日本人選手が、10日に来日した。目的はプロ野球の入団テストを受けるためだ。退路を断って、なぜ日本を選択したのか。その想いとは――。
2015/09/12
写真提供/安藤美枝
日本球界の未来にも一石を投じる挑戦に
もっとも、たとえばカープの入団テストでは打撃力と守備力をアピールする二次テストの前に、50mを6秒5以内で走り、遠投で90m以上を投げる一次テストをクリアしないといけない。
「アメリカを発つ前に50m走を計測したら6秒4でした。ギリギリですけど、緊張することなく、思い切りスタートを切れば大丈夫でしょう。遠投は問題ありません。高校のグラウンドはホームからセンターまでの距離が375フィート(約114.3m)あって、チームメイトたちとオーバーフェンスをよく競い合っていました。もちろん、僕はフェンスを超えましたよ」
10年前に初めて帰国したときに遊んでくれた記憶がうっすらと残る、祖父の荒川忠義さんが3年前に76歳の若さで他界した。天国へ旅立つ直前に美枝さんとケビンのもとを訪れ、「頑張れよ」とかけてくれた言葉が、いまでは魂を昂ぶらせるエールになっている。
「攻める、守る、そして走ることを含めて、僕は常に100%全力でいく選手ですから」
アメリカから日本へ――。より高いレベルを求める日本人選手が、海を渡っていく潮流が定着した日本球界の未来にも一石を投じる勇気ある挑戦。狭き門であることを承知の上で入団テストに臨むケビンを鼓舞するように、憧れの阿部は10日夜に甲子園で行われたタイガース戦で豪快なアーチを夜空へ架けている。
藤江直人